東京五輪・パラリンピック表彰式で選手に贈られる約5000個の金銀銅メダルには、日本が誇る、ある精神が込められている。

 今大会のメダルは「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」で集められた、使用済みの携帯電話や小型家電等から収集した金属から作られた。全国1621自治体が参加したプロジェクトの事務局・幹事会社を務めた企業の一つ、リネットジャパンの黒田武志社長(55)は「メダル一つひとつに、提供してくれたみなさんの思いが込められている。出してくれた方は『あの選手のメダルはうちのパソコンの金属からかも』と思うでしょう。協力してくれた子供たちが五輪に興味を持ち、選手になることだってあるかもしれませんよね」と目を輝かせる。

 プロジェクト開始にあたり、黒田社長はプレゼンテーションで「今後100年間、世界25か国の大会で日本初の〝もったいない運動〟を展開する」と今大会以降も五輪でプロジェクトを継続する意欲を示した。言葉通り、2019年秋に渡仏し、24年大会を行うパリ組織委員会にもプレゼン。リサイクルに関心が高い欧州とあって、強い興味を持たれているという。

「日本が誇る〝もったいない精神〟は、今大会のレガシーにもなる。丁寧なリサイクル、それを自然にできる日本国民の優秀さは世界に誇れる」(黒田社長)。東京生まれの都市鉱山メダルが、世界に広まる可能性は十分だ。

 金属の分離作業には知的障がいを持つ人たちも携わった。完成までに多様な人々が参加し、今までにない価値を持ったメダル。まずは今大会で日本、世界の選手の胸元に輝く。