2032年の五輪開催が決まったオーストラリア・ブリスベンのあるクイーンズランド州のアナスタシア・パラシェ州首相の開会式出席を巡って、〝はったり男爵〟ことジョン・コーツ国際オリンピック委員会(IOC)副会長による〝パワハラ疑惑〟が大きな波紋を呼んでいる。

 オーストラリア放送局「ABC」は「ブリスベンが五輪開催権を獲得したことを祝う中、オーストラリアオリンピック委員会(AOC)のボスであるコーツは、パラシェ州首相に、公的交流のため東京五輪の開会式に出席するよう命じた。パラシェ女史は以前から東京五輪の開会式はホテルから見ているだけだと主張していた」と2人の対立を報じた。

 国民人気の高い女性首長として有名で〝オーストラリアの小池都知事〟とも言うべき存在のパラシェ州首相。東京五輪を巡っては来日こそしたものの新型コロナ禍の深刻化により、オーストラリア国民からの大会への批判も高まっている背景から開会式には出席せず宿泊ホテルに待機する方針を表明していた。

 しかしAOCの会長を務めるコーツ氏は「腕を組んで座って、集まった報道陣にこう言った。『クイーンズランド州首相は自分の部屋に隠れることはできない』と主張した」と欠席を撤回するよう〝命令〟。さらにこう続けた。「(州首相は)開会式に行くんだ。2032年にも開会式と閉会式があり、皆がそこで仲良くする。伝統的な部分を理解しないと。開会式には関係する人は誰も後ろで部屋に隠れていないよな?」と開会式への出席を強く求めたという。

 コーツ氏から猛烈な〝プレッシャー〟を受けたパラシェ州首相は「彼は素晴らしい。私たちが五輪を確保するための原動力で、ビジネスコミュニティーと政府を協力させた。彼のネットワークは絶対的に驚異だ」とコーツ氏の〝権力〟の大きさを指摘。そのうえで東京五輪の開会式については「市長、連邦大臣、私が行くことが期待されているということだ。私はそれをコーツさんと(IOCの)トーマス・バッハ会長に任せる。誰も怒らせたくはない」と出席命令を受け入れる姿勢を示し、IOCの男爵ツートップに判断を委ねる考えだ。

 新型コロナ禍の深刻化を考慮した州知事の判断を強引に覆そうとするコーツ氏の〝強権発動〟に波紋が広がりそうだ。