これで間に合うのか。東京五輪開幕まで1か月を切ったというのに、新型コロナウイルス対策の〝穴〟が次々と見つかっている。先日は来日したウガンダ選手団へのコロナ対応を巡り、課題が浮き彫りになったばかり。さらに大会関係者の宿泊用ホテルを取材すると、様々な問題が発生していることが判明した。開幕直前、焦りを募らせる現場の声とは――。

 東京五輪の延期決定から1年3か月の間、いったい何を準備してきたというのか。すでに海外から複数の選手団が入国する中、耳を疑うような事実が次々と起きている。

 一つは、コロナの水際対策だ。ウガンダ選手団のケースでは、来日時の空港検疫で1人の陽性が判明。濃厚接触者が特定されないまま大阪の合宿地へ移動後、新たに1人の陽性者が判明して大問題となった。

 大会組織委員会は選手を外部と接触させない「バブル方式」を採用しているが、現状ではすり抜け放題。政府や組織委は対策を練り直しているが、本番直前の段階で「再検討」や「見直し」という言葉が出てくること自体が異常事態だ。さらに、それ以外の驚くべき実態も取材で明らかになった。

 大会関係者が宿泊するホテルのうち、現時点で全く〝五輪仕様〟になっていない施設が存在するのだ。レスリング、フェンシング、テコンドーなどの競技が行われる幕張メッセ(千葉市)の近隣ホテルには、組織委や各競技団体の関係者が宿泊予定。その一つ、「ホテルスプリングス幕張」は五輪開催が決まった当初から一定数の部屋が組織委によって押さえられたという。同ホテルのスタッフは「まだ組織委員会から全く詳細が下りてきていない状況です。誰が泊まられるのかも把握できていません」と戸惑いを隠せない。

 現在、一般客向けのコロナ対策は講じているが「それ以外に関しては組織委員会から『こうしてください』と言われない限りは動けない。どのように動けばいいか全く読めないので、不安以前の問題ですね。たぶん、組織委員会から情報が来て初めて不安に思ったり、慌ただしくなると思います」と打ち明ける。

 専用エレベーターを設けたり、関係者と一般客の動線やフロアを区切る作業も一向に進んでいないようだ。

 一方で「ホテルニューオータニ幕張」は別の課題を抱える。まず、担当者は「組織委から届いている宿泊ガイドラインはあくまで〝協力依頼〟であり、強制ではないと読み取れます」と話す。つまり、どの程度の重要性をもって取り組めばいいのかが明確ではないということだ。さらに「記載された対策を全部やろうとすると人員の問題も生じ、費用もかかるんです。それが国や組織委からいただけるならできますが、なかなかご支援も限りがあるようで…」と困惑している。

 いずれにせよ、現段階で関係者の宿泊施設のコロナ対策は手つかずのまま。現状を見る限り、大会前にバブルが崩壊してしまいそうだ。