アジア大会(韓国・仁川)で一眼レフカメラを盗んで略式起訴された競泳の冨田尚弥(25)が弁明会見を開くことに、日本水泳連盟が大困惑している。

 30日の臨時理事会で水連は冨田に2016年3月31日までの選手登録停止や反省文の提出、一定期間の社会貢献活動の実施などの処分を下した。ところが、当の冨田は「自分は盗み行為はやってはいない」として、11月6日に名古屋市内で弁護士立ち会いのもと会見を開くことを発表。泉正文副会長兼専務理事(66)は「(韓国)警察当局の判断が覆るようなことがあれば、修正するのは当たり前のこと」と話し、場合によっては処分の撤回も視野に入れた。

 とはいえ、不可解な点は多い。冨田の「カメラはそばにいた人からもらった」との主張は、水連関係者も聞いていた。しかし、罰金100万ウオン(約10万円)を支払い、被害者とも示談が成立している。事件発覚後、選手村で4日間、冨田と寝食をともにした泉氏は「本来なら捜査の段階で言わないと。小学生、中学生じゃないんだから」と首をかしげるばかりだ。

 さらに別の関係者は「カメラを渡されたならその映像があるはず。冨田を信じてやりたいけど、証拠がないでしょ」と前置きし、最悪のシナリオを危惧する。「韓国での処分は仮なんですよ。もし不服申し立てをして、再びクロなら刑が2倍、3倍に重くなる。罰金だって10倍、20倍になりますよ。そのリスクを背負うだけの確証はあるのか。国の問題になる」と日韓の国際問題に発展する可能性を指摘した。

 冨田は韓国でも日本語が堪能な弁護士を紹介されていた。今度の会見では別の弁護士をつけている。“真実”を隠した意図は何なのか。水連は会見の行方を注視している。