東京五輪の開幕まで残り50日を切ったが、国民の間では中止を求める声が絶えない。その一方で、開催準備を進める側も頭を悩ませている。

 当初は観客の上限人数が4月中に発表される予定だったが、東京都などに緊急事態宣言が発令されたこともあり、ズルズルと先延ばしに。大会組織委員会の橋本聖子会長(56)は「緊急事態宣言後に観客の動員などが決まってくる」と説明するものの、この発言に大会の会場を抱える多くの地方自治体が困惑しているのだ。

 福島県の福島市では、東京五輪で野球・ソフトボールが行われる。同県五輪・パラリンピック推進室の担当者は「事務的な発注は後ろ倒しできるように、各事業者さんと相談している。もし、無観客になった場合でも不必要になるような準備がないようにしたい」と話すが、不安要素もある。無観客時には、備品等のキャンセル料が発生してしまうケースも想定されるため「万が一の場合でもキャンセル時の損失を最小限に抑えるようにしたいので、個別に工夫している」と細かい交渉を重ねているという。

 サッカー、マラソン、競歩が開催される北海道札幌市は、都市ボランティアの対応に苦慮。同市スポーツ局の担当者は「無観客であれば、ボランティアらも観戦自粛を促す広報や事業に携わることになると思うが、有観客になると、ボランティアによる案内業務や観客を対象とした事業をどうするかとか、いろいろ考えないといけない」と声を落とす。

 観客の上限数がはっきりしない限り、準備の見通しが立たないのが現状だ。他の自治体からは「早く決めてほしい。直前まで延びてしまってあきれている」と諦めに近い声も。このまま五輪が強行開催されたとしても、本当に成功するのだろうか…。