【韓国・仁川28日発】アジア大会競泳男子平泳ぎに出場した冨田尚弥(25=チームアリーナ)が韓国メディアのカメラを盗み、日本代表から追放される前代未聞の事態は、日本中をあきれかえらせた。この事件で意外な波紋も広がっている。

 出国禁止中の冨田は現在も居場所を確定させるため、選手村に滞在している。近日中にも書類送検される見込みだが、韓国では冨田窃盗のニュースがほとんど流れていないのだ。いつもの韓国なら、ここぞとばかりに日本バッシングに走りそうなものだが…。「日韓の関係改善に努めている時期だし、不祥事ではなく大会そのものを盛り上げるためにも組織委員会から報道の配慮要請があったのでは」(日本選手団関係者)と見る向きもあるほどの静けさだ。

 一方、日本国内では当然ながら大問題。非難の矛先は冨田だが、とんだとばっちりを受けるのが日本代表選手たち。今回の一件は「日本選手団の行動規範以前の問題」(青木剛団長)ではあるが、日本選手団の一員が事件を起こしたのは紛れもない事実。「日本代表だった人間が起こしたのに、何も手を打たないでは済まされない。今後、日本代表選手にはもっと規律を厳しくしなければ。競泳だけじゃない。あいさつや生活態度なども含め、締め付けを徹底する」と日本オリンピック委員会(JOC)幹部は断言する。

 日本競泳陣は1984年ロス五輪で一部選手が大麻を使用し、五輪代表を含む5選手が永久追放(88年に解除)された。その後、茶髪やピアスを禁止にするなど厳しいルールを設けてきたが、またも不祥事が起きた。競泳に限らず身なりはもちろん、あいさつや会話の仕方、礼儀、普段の生活での飲酒喫煙にいたるまできっちりとルールを作り、日本代表の名に傷をつけぬよう指導せざるを得ないという。まっとうに努力している選手にとっては迷惑極まりなく、冨田の罪は重い。