【韓国・仁川18日発】第17回アジア大会は19日、開幕する。選手・スタッフ合わせて総勢1069人を派遣する日本は、4年前の前回大会とほぼ同じ50個前後の金メダル獲得を目指すが、中でも大きな注目を集めるのは、競泳の天才スイマー・萩野公介(20=東洋大)だ。若きエースには2002年釜山大会の北島康介以来となる“ビッグタイトル”獲得も期待される。

 今大会の萩野は、リレーを加えて最大8種目に出場する。得意の個人メドレー2種目のほか、自由形や背泳ぎで金メダル候補に挙げられている。18日の練習後は「感触はよかった。楽な感じでいいタイムで泳いでいた」と順調な仕上がりをアピールした。

 萩野の前に立ちはだかるのは、韓国で絶大な人気を誇る北京五輪400メートル自由形金メダルの朴泰桓(パク・テファン=24)。今回の競泳会場となる文鶴水泳場は国内で「朴泰桓水泳場」と命名されるほどの英雄だ。今回は開幕前からロンドン五輪自由形2種目(400メートル、1500メートル)金メダルの孫楊(22=中国)と朴のライバル対決が盛り上がっているが、萩野がこの2人を押しのけて主役となれば「大会MVP」に輝く可能性がある。

 日本人では1998年バンコク大会で陸上短距離の伊東浩司、02年釜山大会で北島がMVPを獲得している。受賞の明確な基準はないが、伊東は100メートルでアジア新となる10秒00をマークし、北島も200メートル平泳ぎで世界新記録を樹立。06年ドーハ大会は競泳で3つの金メダルを獲得した朴が選ばれた。「記録のインパクト」か「複数メダル」が条件と目されるだけに、その両方を狙える萩野は最もMVPに近い位置にいるといっていい。

 日本水泳連盟の鈴木大地会長(47)は萩野のMVPの可能性について「あるでしょうね」と即答。泉正文副会長兼専務理事(66)も「ほかにも強い選手がいるけど、可能性はある。慢心しないで頑張ってほしい」とゲキを飛ばした。

 個人メドレー2冠を達成した8月のパンパシフィック選手権では、不順な天候の影響でタイムが伸びなかった。アジア大会では400メートル個人メドレーを筆頭に日本記録の大幅更新を狙っている。「アジアの頂点に立たないと世界の頂点には立てない。『アジアの頂点を取るんだ』という強い気持ちを持っていいレースをしたい」。MVP受賞者にはアジア大会組織委員会から賞金5万ドル(約540万円)が贈られ、名実ともにアジアを代表する“顔”になる。大きな勲章を手にし、16年リオ五輪に向けて弾みをつけたいところだ。