“選手不在”の五輪!? 新型コロナウイルス感染が再拡大する東京で、25日から3度目の緊急事態宣言が発令される見通しとなった。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)らが東京五輪開催に自信を見せる一方、世界では引き続きコロナが猛威を振るっている。国際大会ではバブル方式をすり抜ける感染者が出ており、五輪開催を強行しても選手が出場できない“笑えない事態”となる可能性も指摘されている。

 IOCのバッハ会長は理事会後の記者会見(21日)で緊急事態宣言について「東京五輪とは関係がない」と述べ、日本中からひんしゅくを買ったばかり。また、大会組織委員会の橋本聖子会長(56)も、宣言中のゴールデンウイークに五輪テストイベントを開催する姿勢を見せている。

 ただし「緊急事態」なのは東京だけではない。世界保健機関(WHO)によれば、世界の1週間あたりの新たな感染者数は8週連続で増加。また、二重変異株が猛威を振るうインドでは22日、新規感染者数が31万4835人となり、1日あたりの感染者数で世界最多を記録した。

 この猛威と無関係とは思えないのが、カザフスタンで行われたレスリングの東京五輪アジア予選とアジア選手権の2大会だ。日本や韓国、さらにインドやイランなどが参加。大会を終えて帰国した日本と韓国の両選手団で、これまでに計15人のコロナ感染が判明した。いずれも渡航前、現地到着後、大会期間中、現地出国前と検査で陰性だったにもかかわらず、自国に帰国後の検査で陽性が発覚している。

 大会では試合以外はマスク着用が義務付けられ、選手団は一切の外出が禁止。これを破れば出場停止や罰金が科される規則だった。いわゆるバブル方式だが「日本に比べると、検査の仕方やルール徹底が甘かった感はある」との声も関係者から漏れ聞こえており、検査精度や各国選手団の感染防止に対する温度差が影響した可能性がある。

 また、他競技でもテニスの全豪オープン(2月)で、検査で陰性確認後にチャーター機で現地入りしたにもかかわらず感染者が出現。3月にはハンガリーでの国際大会を終えたフェンシングの日本選手団から5人の感染者が出ており、バブルと言えど、完全な封じ込めは難しい状況だ。

 世界的なパンデミックが収まらないかぎり、五輪でも検査をすり抜け、感染した関係者が来日する可能性は消えない。橋本会長は大会期間中に1日1回のコロナ検査を実施する考えを示しているが、ある競技団体幹部は「来日してから陽性で隔離される選手が続出して、気が付いたら戦う相手がいなかった、なんてこともあるのかも」とポツリ。世界一を決定する祭典の実現は、東京の努力だけではどうにもならないかもしれない。