コロナ禍で崩れた商業五輪の思惑…専門家は「永久アテネ開催」を大胆提言

2021年04月20日 05時15分

舛本直文氏(提供写真)

 祭典の意義とは――。新型コロナウイルスの影響で史上初の1年延期となった東京五輪。7月23日の開幕まで残り約3か月となったが、開催を疑問視する声が各方面から聞かれる。そんな中、五輪研究の第一人者で知られる東京都立大・武蔵野大客員教授の舛本直文氏が本紙の取材に応じ、五輪の問題点を指摘。コロナ禍で「商業五輪」の限界が見えた今だからこそ「永久アテネ開催」を訴えた。

 2度目のチャンスはないようだ。各地でコロナの感染者が右肩上がりで増加中。共同通信社の全国世論調査によると、今夏の東京五輪の開催について「開催すべきだ」が24・5%、「中止するべきだ」が39・2%、「再延期するべきだ」が32・8%だった。

 中止や再延期を求める意見が約7割を占める結果となったが、舛本氏は「今となっては、再延期はない。まず、選手村を確保できない。これはマンションとして分譲しないと、そちらの賠償の方が大きくなる。次に(メディアセンターとして使用される)東京ビッグサイトや(バスケットボール会場の)さいたまスーパーアリーナなどのイベント施設をさらに1年延ばして使用するのは無理」とした上で「開催したいのなら2032年以降に再トライすることになる。その場合は延期ではなく中止です」ときっぱり言い切った。

 東京五輪の招致にあたり、多くの五輪関係者は「東日本大震災からの復興」を強調していたが、その裏には別の計算があった。舛本氏は「今回、日本政府が狙っていたのはインバウンド需要。外国からお客さんを招いて、世界に日本文化を広め観光立国にしようとしていた。でもそういう思惑ではダメ。今回はコロナでその思惑が崩れた。五輪開催の本来の意義ともズレる」と苦言を呈した。

 一方で、舛本氏は「今こそ、五輪は何のために開催するのかという根本を考え直す最高のチャンス」とも話す。五輪は年々商業化が進み、マネーゲームのごとく、多くのお金がつぎ込まれている。「いろんな種目を増やし、プロ選手も入れてテレビ視聴率を稼ぎ、派手な演出でお金がかかる肥大化したメガ・イベントになっている。そして、テレビマネーが大きな力を持ち、スポンサーもビジネスチャンスとしてしか捉えていない」と疑問視した。

 さらに、五輪が各国の力をアピールする場に変質。政治色が強くなっているため「国民は自国選手のメダル獲得にしか関心がないメダル至上主義に陥っている。さらに、国際オリンピック委員会(IOC)の貴族主義、招致都市の思惑による賄賂の横行など、多くの問題を抱えている」と批判した。

 このままでは五輪本来の姿が完全に失われてしまう。では、何を変えるべきなのか。これまでは激しい招致合戦が繰り広げられていたが、今では手を挙げる都市も少なくなっている。

 このことから「(ギリシャの)アテネで恒久開催にしたらいい。昔は4年に1度オリンピアにギリシャ中から人が集まった。だから今度はアテネを五輪の聖地にして、アテネにみんなが集まればいい。競技場は、スポンサーにネーミングライツを売却して、いいものを造らせて、維持、管理も全部スポンサーに任せる。スポンサーも社会貢献しているということで宣伝効果を得られるはず」と大胆な策を打ち立てた。

 当然、アテネを訪れる五輪関係者が宿泊する選手村の確保も必須。そこで「外国の大学の寮は日本と違って、夏休みの間は全員が寮から出る。その時期はいろんなイベントの宿泊施設として使われる。そのため、IOCがアテネに大学のいい学生寮を造り、五輪のときにはそれを選手村として使えばいい」と施設の有効活用を提案した。

 1984年ロサンゼルス五輪から商業化にかじを切ったIOCだが、今回のコロナ禍で事態は一変。ついに五輪の在り方を根本から見直す時期が来たようだ。

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