〝中止コンプライアンス違反〟だ! 新型コロナウイルス第4波が猛威を振るう中、15日に自民党の重鎮である二階俊博幹事長(82)から東京五輪の「中止」を示唆する発言が飛び出し、物議をかもした。ところが同日中には釈明コメントを発表。コロナ対策で後手後手に回る政権とは対照的に、スピーディーに〝火消し〟へと動いた。この背景には、政界の大物ですら中止への言及を許さない、東京五輪を取り仕切る「鉄のおきて」があった。


 事の発端は15日に収録されたTBSのCS番組でのひと幕。二階幹事長は東京五輪について「とても無理ならやめないといけない」「五輪で感染症を蔓延させたら、何のための五輪か分からない」と言い放った。この〝中止発言〟は瞬時に海を越え、世界中のメディアが報じた。

 日本国内でも東京都の小池百合子知事(68)は「叱咤激励。コロナを抑えていきましょうというメッセージ」と〝火消し〟に走り、大会組織委員会の橋本聖子会長(56)も中止検討を「ない」と否定。すると同日午後、二階幹事長は「何が何でも開催するかと問われれば、それは違うという意味で発言した」と釈明コメントを発表した。

 同幹事長に苦し紛れな言い訳をさせた裏に潜むのが、国際オリンピック委員会(IOC)、組織委、日本オリンピック委員会(JOC)ら五輪関連団体と日本政府、東京都の首脳による開催反対派への〝弾圧〟だ。昨年7月、れいわ新選組の山本太郎代表(46)が五輪中止を公約に掲げて東京都知事選に出馬した際、組織委内で「山本太郎」がNGワードになっていたが、それだけではない。

 実は昨秋から複数の五輪競技団体が万が一の事態に備え、五輪中止を見据えたシミュレーションを行っていた。ところが水面下で〝横やり〟が入ったという。ある競技団体幹部は「中止になった場合の組織運営を話し合うのは組織として当然です。でも、そのことがJOCや組織委の耳に入ったら大変。五輪を絶対にやるというスタンスしか許されないんです」と明かす。

 実際、過去にスポーツ庁、組織委、JOCらにメディア対応の「模範コメント」が載った文書が出回ったこともあった。中止や延期のワードには絶対に触れないおきてはもちろん、詳細をボカして発言する〝お茶濁しコメント〟の例文まで記載されたこともある。緊迫感が漂う現在は監視の目がさらに強まっており、今回は政権与党の重鎮ですら〝言葉狩り〟に遭ってしまったわけだ。

 とはいえ、新型コロナウイルス終息の見通しが立たない中での二階発言は自然な流れ。ネット上では「珍しくまとも」と評価する声も上がっている。このままでは〝魔のコンプライアンス〟といえども、制御不能に陥るのは時間の問題と言えそうだ。