前途多難だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で今夏に延期された東京五輪の聖火リレーが25日に福島県のJヴィレッジからスタート。7月23日の開会式(東京・国立競技場)に向けて、全47都道府県から選ばれた約1万人のランナーが121日間かけて聖火をつなぐが、初日から聖火が消えるなどの複数のトラブルが発生した。さらに、聖火リレーの運営に携わる関係者からは〝最悪の事態〟を危惧する声が飛び出しており、決して先行きが明るいとは言えない――。


 コロナ禍の中での聖火リレーが幕を開けた。福島・Jヴィレッジで行われたグランドスタートセレモニーは一般客を入れず、出席者を約60人に絞り込んで間隔を空けて座る形に簡素化して開催。大会組織委員会の橋本聖子会長(56)は「日本と世界の皆さんの希望が詰まった大きな光となり、国立競技場に到着することを祈念する」とあいさつした。

 第1走者を務めたのは、2011年サッカードイツ女子W杯で優勝した「なでしこジャパン」のメンバー16人。トーチを持つ岩清水梓(34=日テレ)を先頭に走り出した。その一方で、Jヴィレッジ周辺では早くも「密」の状態が発生。コロナ対策として沿道での観戦を規制したが、エリア外に多くの観客が集結することになった。

 さらに、第6区間の富岡町を走行中の女性ランナーが持っていたトーチの火が消えてしまうハプニングも起きた。すぐにスタッフが駆け寄り、ランタンから火がともされて再開されたものの、何とも不安な滑り出しとなった。武藤敏郎事務総長(77)が「大きな問題なく、予定通りに実施することができた」と成果を強調しても、ネット上では「縁起悪いなあ」「暗雲垂れ込めてるなぁ~」「不吉な予感だね…。リレーになってない」などと先行きを危惧するコメントが飛び交った。

 組織委はかねて〝ウィズコロナ〟の運営方法を模索。沿道で「密」が長時間続いた場合、当該市区町村や当該ランナーの区間をスキップする方針を示している。しかし、聖火リレーに携わる組織委の関係者は「ずっと(密を)放置するのはダメ」と前置きした上で「形としては『肩を触れ合う感じはちょっとやめてください』となっているが、それで(聖火リレーを)停止するかと言われると、やっぱり流れを止めたくはない。東北にエールを送りつつ、コロナで疲弊している人たちを盛り上げるのが目的だと思っているので、なるべく水を差すようなことはしたくない」と複雑な胸中を明かした。

 加えて同関係者は「テロのようなことが起きるかもしれない」とまさかの不安も…。なぜか。「(五輪開催を)よく思っていない人が突発的に襲ってくることも想定しておかないといけない。(侵入者がいた時に)都合よく警備員がいるとは限らない。いろんなケース、最悪な事態も含めて考えないといけないが、どうしてもコロナ優先で物事を考えてしまっていて、ちょっと(警備体制が)手薄かなという心配はしている」と危機感を募らせている。

 東京五輪まで約4か月。聖火リレーのスタート直前にも著名人の走者の辞退が相次ぐなど一向に盛り上がらないままだが、ここから気運を高めていくことはできるのか。まずは聖火が無事に国立競技場まで運ばれてくることを祈るばかりだ。