突飛なことは言わない――。日本スケート連盟会長や五輪の日本選手団団長としてメディアと接してきた橋本聖子五輪相(56)はそんな人物だった。候補者検討委員会が、失言で辞任に追い込まれた東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の後任に絞り込んだのはそれを見込んでのことだろう。

 取材を受ける際の橋本氏はとにかくゆっくりと言葉を選んで話していたのが印象的。国会議員としても多忙ななか、常に限られた時間での取材対応だけに、聞き手が焦りを感じるほどだった。

 失言はないのはもちろんのこと、リップサービスも控えめ。夏冬合わせて7度五輪出場のスーパーアスリートだけに、選手心理などを聞けば、なるほどと納得せざるを得ない言葉が返ってくるが、誰も指摘しないような特別なことを言うわけではない。

 フィギュアスケートの高橋大輔へのキス強要疑惑もあり、酒席などではまた別の顔があるのかもしれないが、少なくとも公の場でとんでもないことを言い出すタイプではないだけに、周囲にとって扱いやすい、コントロールしやすい会長を期待されているのだろう。

 これだけ外堀を埋められた状況で橋本氏が固辞するとすれば、コントロールできるはずのものが、実際にはコントロールできなかったということ。候補者検討委としては大きな見込み違いとなるが、果たして。