“肉体改造”失敗した北島

2012年08月01日 18時00分

【英国・ロンドン発】ロンドン五輪3日目(29日=日本時間30日)、競泳男子100メートル平泳ぎ決勝で北島康介(29=日本コカ・コーラ)が59秒79で5位に敗れる大波乱が起きた。日本の誇る天才スイマーは世界中から金メダルを確実視されていたが、競泳男子の個人種目で前人未到の3連覇を逃した。競泳界の「キング」にいったい何が起こったのか。まさかの惨敗劇の理由を探った。 

 頂点に一番近い存在と目されていた男がまさかの大惨敗。シドニー、アテネ、北京五輪と北島を指導した日本代表の平井伯昌ヘッドコーチ(49)は不調の理由についてこう分析した。

「4月の日本選手権では素晴らしいな、と感じていた。でも、泳ぎも気持ちも、もう一度五輪でピークを作ることの難しさがあったと思う」
 2大会連続2冠を達成した北京五輪後、拠点を米国に移した。新たな挑戦として個人コーチをつけず、自分で考えて泳ぐことを取り入れた。ロンドン五輪予選を兼ねる日本選手権では、北京五輪で出した日本新記録を塗り替える58秒90で優勝。最高の状態でロンドンに乗り込んだはずだった。

 ところが一方で、さらにパワーのある肉体作りを目指し、上半身の筋力トレーニングを増やした。結果的にこれが失敗。体の部分部分を一つの動きにまとめ上げるところでつまずいてしまった。「みんな、国内予選は通過点で、五輪でさらにいい状態を作ってきた。康介はその辺がうまくできなかったと思う」(平井ヘッド)

 調整ミスが精神面にも影響した。北島は「泳ぎがかみ合わず、いろんなことを考えてしまい、迷いが出てきて苦しかった。何か自信持ってバーンといけるところがひとつもなかった」。いつもならレースの時には明らかに戦闘モードに入るが「『あれ? あれ?』という感じで、考えながら泳いでいるから無意識になれない。野性的になっていない」(平井ヘッド)。

 4月には米国での高地合宿中にライバルのアレクサンダー・ダーレオーエンさん(享年26)が急逝。そのダーレオーエンさんが昨年の世界水泳上海大会で前半から飛ばしまくり、58秒71という驚異的な記録を樹立。これが「みんなが目指すスタンダードになった」(平井ヘッド)ことで、世界のライバルたちは前半からいかに飛ばし、58秒台で優勝するかを考えてトレーニングした。その結果、優勝したキャメロン・ファンデルバーグ(24=南ア)は世界新で優勝。高速化を目指したライバルたちの成長についていけず、北島は「オレはあのタイムは出ないだろうね。その力がない」と完敗を認めざるを得なかった。

 さまざな要因が重なって敗れたキング。だが、年齢的な衰えは指摘されていないだけに8月1日(日本時間2日)の決勝でもう一度3連覇の可能性が残されている。「粘るよ。最後まで粘るよ。応援してくれる人、チームのためにも頑張るよ」(北島)。キングの意地の見せどころだ。