【Restart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(22)】2つの夢を成就させるために――。パラアーチェリー男子リカーブの上山友裕(33=三菱電機)は、新型コロナウイルス禍の中でも、さまざまな企画を催している。競技面だけでなく、競技外でも活動の幅を広げる裏には、あるスーパースターの存在があった。 (随時掲載)

「なんか知らないけど、アーチェリーに戻されちゃうんですよね」。大学のアーチェリー部を引退後は競技から離れていたが、就職を機に会社の同僚に誘われて競技を再開した。しかし、2010年に原因不明の両下肢機能障害を発症。その矢先に、パラアーチェリー転向の勧誘を受けたことがきっかけで、再び本格的に競技へ取り組むことになった。

 転向後は仕事と練習を両立し、13年には世界選手権出場を果たした。しかし、レベルの違いを感じ「無理だと思ったんですよ、この今の環境だと」。自らの足で競技を全面的にサポートしてくれる会社を探し、14年に三菱電機へ入社。「練習に専念できる状況になった」と一歩ずつ道を切り開いていった。そして、初出場となった16年リオ大会で7位入賞。19年世界選手権でも6位に入り、東京大会の切符をつかんだ。さらに、世界ランキング2位を1年以上キープするなど「金メダル」に向け、着実に成長を遂げている。

 そんな上山のもう一つの目標は「パラアーチェリーの会場を満員にする」ことだ。そこで、プロ野球の阪神、日本ハム、さらにメジャーリーグでも活躍した新庄剛志氏(48)を参考にしながら、ファン層の拡大を目指している。

「新庄さんは札幌ドームを満員にするって言って(当時)全然人気のない日本ハムの(本拠地)札幌ドームを満員にした。この人が目指すところだなと思った」。実際に、バイク入場ショー等のパフォーマンスは〝新庄劇場〟と呼ばれ、多くのファンを魅了した。上山も自粛期間中にファン限定の「オンライン飲み会」を開催し、大きな話題を呼んだ。また、実現こそならなかったものの、ゲーム内での交流会など、ユニークな〝上山劇場〟を計画していたという。

 真夏の祭典まで7か月余り。「会場を満員にして金メダル」という目標を実現するべく、競技内外で精力的に活動を続けていく。 

 ☆うえやま・ともひろ 1987年8月28日生まれ。大阪府出身。大学入学後にアーチェリーを始めると、レギュラーとして活躍。インカレ(日本学生選手権)にも出場した。社会人1年目の2010年に原因不明の両下肢機能障害を発症し、11年にパラアーチェリーへ転向。その後、国内外の大会で好成績をマークし、16年リオ大会で7位入賞。19年世界選手権では6位に入り、東京大会の内定を決めた。また、プロ野球オリックスのファンで、好きな選手はT―岡田外野手(32)。181センチ、68キロ。