いよいよ東京五輪・パラリンピックイヤーを迎えた。新型コロナウイルス感染拡大が世界に暗い影を落とす中、スポーツ庁の室伏広治長官(46)が本紙インタビューに応じ、スポーツの魅力、五輪・パラリンピックの開催意義に言及。前編では、コロナ禍の今だからこそスポーツが担う役割について熱弁を振るった。
 
 ――東京五輪・パラリンピック組織委員会のスポーツディレクター(SD)として祭典を成功に導くはずだった

 室伏長官 昨年2月の段階では、トーマス・バッハ会長(66)を含めた国際オリンピック委員会(IOC)も「これほどまでに準備を十分にして、半年前にここまで準備してきた大会はかつてない」とおっしゃってくれていたので、本当に成功が保証された大会だったと思うが、誰もが予想しないような事態になってしまった。

 ――1年延期が決まってからの動きは

 室伏 選手たちがトレーニングをできなかったり、トレーニング会場に入れなかったり、子供たちが学校に行けなかったり、社会的にすべてが停止した状態になってしまったので、本当に大変な状況だった。そんな中で、私が(組織委員会に)いた9月いっぱいまでは、最終的な予算の縮減をどうするか、1年延期に伴って、いかにして削減するかってことに取り組んできた。

 ――10月にはスポーツ庁長官に就任した

 室伏 自分ができるかっていう不安はあるが、ご指名いただいたので。鈴木大地前長官(53)の流れもしっかりくんで、スポーツ界に恩返ししていきたいと思う

 ――スポーツ界への恩返しとは

 室伏 スポーツ庁はトップアスリートのためだけにあるのではない。やっぱり一般の人の健康もそうだし、スポーツを通して国民全体が元気になっていくべき。元気になるっていうのは体の健康のみならず、精神の健康ですね。特に精神の健康は大事だと思っている。みなさんも仕事をやっているが、健康だからやれているってことを忘れてはいけない。一番大切なことは、みんなが元気でそれぞれが活気づいていくことだと思う。

 ――精神を健康に保つ上で、スポーツの担う役割は大きい

 室伏 スポーツをやることもそうだが、スポーツを見ることも大事。感動をもらえると思う。精神的に体も健康になったり、スポーツを見て感動を覚えることで、頑張ろうっていう活力になる。

 ――コロナの影響で精神が不安定になっている人も多い

 室伏 やはり今は日本全体が病んでいる状況。ストレスの矛先が家族やいろんなところに行っているのは、健康な状態ではない。本当に将来に希望を持てない中で、スポーツは貢献できると思う。日本を明るくできるし、前向きになれば次の行動が変わるので、こういうことが我々のやるべきことだと思う。(続く)