新型コロナウイルス禍で来夏に延期された東京五輪の追加経費について、医療現場から懐疑的な声が上がっている。

 複数の関係者によると、大会延期に伴う追加費用は約2000億円に上る見込み。さらにコロナ対策費も900億~1000億円になるとみられ、合計3000億円もの追加費用になるという。

 一方でコロナ第3波が襲う現在、全国の重症者数は472人(30日)と過去最多を更新するなど、ただでさえ医療現場はひっ迫している。「そんなお金があるなら医療に回せ!」という怒りの声も噴出する中、当の医療従事者も黙っていない。

 五輪競技団体の医療ガイドライン作成に携わったある関係者は「この状況で五輪ありきの考え方は理解しがたい。今、最も優先されるべきは重症患者であり、その診察・治療にあたるスタッフです。そのためのお金がなくなる中、五輪延期で税金が使われるのは理解できない」と憤る。都内の医療従事者も「順番が違う。やみくもに五輪中止とは言わないが、今は人命を優先してほしい」と主張した。

 そもそも大会開催経費は1兆3500億円。延期決定後の簡素化案では約300億円の削減が公表されたが、今回の追加経費約3000億円に加え、約900億円を見込んでいた観戦チケット収入の一部はすでに払い戻されている。

 収入源の〝頼みの綱〟である大会スポンサーとは12月末で契約が切れる。現在、再契約へ最終段階だが、各企業の台所事情を考えると、多額の追加契約料など夢物語だ。となると、最終的には国民の〝血税〟が投入されることになるが…。医療現場の不満は高まる一方だ。