来年夏に延期した東京五輪・パラリンピック大会へ向けた国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、大会組織委による合同プロジェクトレビューが18日に都内で行われた。

 この日、IOCトーマス・バッハ会長(66)は帰国の途に就き、会見には大会組織委員会の森喜朗会長(83)、武藤敏郎事務総長(77)、ジョン・コーツ副会長(70)らが出席。今回、新型コロナウイルス対策の一環として、大会中のソーシャルディスタンスに関する議論の方向性が確認された。武藤事務総長は「原則2メートル、最低でも1メートル。十分な距離が取れない時は安心安全を確保できる別の手段を講じることになるのではないか、という論点」と説明した。

 ここで問題となるのが五輪の伝統でもある開会式の入場行進だ。従来までの行進の隊形では当然、ソーシャルディスタンスを確保できない。人数を減らすという方策も出ている中、コーツ氏は「我々は伝統をあまり変えたくないと思っている。すべてのアスリートに行進の機会を与えたい」と話す。

 一方、森会長は「選手にとって開会式で行進することは彼らが持つ固有の特権。誰もが奪うことはできないとコーツさんはおっしゃっているが、私もそう思います」と同調した上で、こんな持論を唱えた。

「安全で安心な大会をやるために我々も大変な努力をしているわけですから、アスリートもある程度、我慢をしていただけなきゃならない。だから(行進は)今までと違ったものになると思うし、またそうすべきだと僕は思っている」

 五輪の慣例として、開会式直後から競技が始まる選手は入場行進ができなかった。過去4大会に出場しながら一度も開会式に出たことがない五輪2連覇の内村航平(31=リンガーハット)は以前に「今回は絶対に出たい。せっかく4大会も(五輪に)出るのにセレモニーを体験できないのは寂しい」と語っている。

 この現状について森会長は「いっぺん選手に聞いてみたらどうか。世界のアスリートたちは『俺たちに行進をさせろ』『開会式に何が何でも出してくれ』という気持ちが本当にあるのかどうか。今までの経験から言うと、優勝狙ったり、メダルを狙っている人はむしろそんなところに出ないという人が多かったと思う。彼らがどう考えているかを少し調査してみたらどうかと提案しています」と話した。

 また、大会の簡素化も大きな課題だ。大幅な経費削減が期待される中、「たった300億円か?」との批判も飛んだ。森会長は「ここまで縮めたのは評価されてもいいと思う。そういう意味でも見た目は大したことないんでしょうね。なるほど、従来と違うなという評価を受けるとするなら開会式の行進じゃないでしょうか」と言い、最後に「私はこれに大変こだわりたいと思っています」と力を込めた。