来年夏に延期となった東京五輪の試金石とされる国際体操連盟(FIG)主催の国際交流大会「Friendship and Solidarity(友情と絆の大会)」(8日、東京・国立代々木競技場)が有観客で行われ、新型コロナウイルス対策を徹底した中で無事に閉幕した。大会に駆け付けた五輪組織委員会の森喜朗会長(83)は「大会が開けた感動と喜びを分かち合いたい」と話し、本番の開催に自信を深めた。

 出場選手で存在感が際立っていたのは〝キング〟こと内村航平(31=リンガーハット)だ。鉄棒でH難度の大技を決めて喝采を浴びただけでなく、閉会式では東京五輪への熱い思いを激白。今でも多くの国民が五輪開催に悲観的な考えを持っている現状を踏まえ「〝できない〟ではなく〝どうやったらできるか?〟を皆さんで考えてほしい。できないと思わないでほしい」と訴えた。

 その内村は結果的に五輪本番の〝予行演習〟にもひと役買った。内村は大会前のPCR検査で陽性となり、再検査で「偽陽性」と判定された。ある大会関係者は「あれ(陽性反応)が内村選手だったことが非常に大きい」と話す。いったい、どういうことなのか。

 同関係者は「偽陽性や偽陰性を疑い出したらきりがない。(再検査を行う)バックアップチームは準備していたが、他の選手なら迷いながらの(再検査の)発動になったかもしれない。でもトップの内村選手が陽性になったことで、迷わず発動させる踏ん切りがついた」と舞台裏を明かした。仮に内村以外の選手なら「陽性」の判定で〝確定〟し、その後の対応が後手に回った可能性もあったということだ。

 内村は偽陽性について「1、2%の確率を引いちゃった…」と漏らしたが、結果的に五輪本番へ向けた貴重な実証データを得ることにつながった。体操界の〝顔〟は、やはりただ者ではなかったということか。