ボクシング・京口の世界戦「選手1人コロナ陽性→興行中止」が東京五輪・パラ開催に与える打撃

2020年11月04日 06時15分

京口の世界戦が行われる予定だった会場のインテックス大阪

 3日にインテックス大阪で行われる予定だったWBA世界ライトフライ級タイトルマッチが、スーパー王者の京口紘人(26=ワタナベ)とチーフセコンドの50代男性が試合前日のPCR検査で陽性反応を示したため急きょ中止となり、衝撃を呼んだ。しかも、挑戦者のタノンサック・シムシー(20=タイ)と前座に出場予定だった6選手は全員陰性だったものの、興行自体を取りやめに。この判断は、来夏の東京五輪・パラリンピックの開催に大きな影響を及ぼすかもしれない。


 2日午前に行われた前日計量を一発パスした京口は「自分のボクシングができたら結果はついてくる」と意気込みを語ったが、この後のPCR検査で陽性が判明。チーフセコンドは同日朝の抗原検査で陽性を示し、PCR検査でも同様だった。

 今回は新型コロナウイルス感染拡大後、国内で初めて海外から選手を呼んで行われる国際イベントを有観客で開催するとあって、スポーツ庁や東京五輪・パラリンピックの関係者も注目していた。

 会場には4000席のイスを並べるが、観客数は1席空けて半分の約2000人。他にも当日の感染予防対策は万全を期していた。しかし「いかに興行を開催するかという前提で頭がいっぱいで、選手から感染者が出たらどうするかというシミュレーションはやっていなかった」と、プロモーターのワタナベジム・渡辺均会長(70)は明かす。

 国内のボクシングでは10月13日の興行で出場選手1人が前日のPCR検査で陽性反応を示し、その選手の試合は中止されたものの、他の選手の試合は行われた。今回も前座だけでの開催が検討されたが、メインイベントの世界タイトルマッチがなくなることで興行そのものを中止に。ただし計量をパスし、PCR検査も陰性だった他の選手たちに責任や過失はないため、ファイトマネーは支払われるという。

 折しも1週間前の先月27日には、政府などによる「東京五輪・パラリンピック競技大会における新型コロナウイルス感染症対策調整会議」が開かれた。大会本番時に選手がコロナ陽性となった場合にただちに出場不可となるのか、再検査などで陰性になれば出場可能なのか、さらに各競技の特性や、チーム競技か個人種目かによってどう考慮するのかを今後検討していくことが確認された。

 また、8日に東京・代々木第一体育館で開催される体操の国際大会では、出場選手が陽性となった場合は「感染拡大の可能性を医師団と保健所で検証し、拡大の可能性がなければ該当者だけ隔離。PCRのバックアップチームも、数時間後に偽陽性を判断できる態勢を完備しました」(国際体操連盟・渡辺守成会長)という。

 そんな状況下で、プロボクシングが「選手1人が陽性→興行中止」との前例をつくった。これは東京五輪・パラリンピックでも同様の形になるとの印象を世の中に与えたことになる。

 一方、今回の試合に向けて先月8日にタイから来日した挑戦者のタノンサックは、2週間の隔離期間中に借り上げた10畳ほどのマンションにエアロバイクや置き型のサンドバッグを持ち込んだ。このためベッドを置くスペースがなくなりクローゼットで寝る生活を続け、外には一歩も出なかった。かたや王者の京口は、先月中旬以降も自身のSNSに外食したとみられる投稿を複数回していた。

 感染との因果関係はわからないが、陰性と陽性の結果を見ると、危機意識の差があったのは間違いない。これが東京五輪・パラリンピックの開催にまで関わってくることになるだけに、今後も波紋が広がりそうだ。