【ロシア・ソチ13日(日本時間14日)発】フィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)で、他の日本勢も健闘した。“偽ベートーベン”騒動に揺れた高橋大輔(27=関大大学院)は最後の「ヴァイオリンためのソナチネ」に乗って86・40点で4位。“氷上の哲学者”町田樹(23=関大)は83・48点の11位につけた。3位のハビエル・フェルナンデス(22=スペイン)が86・98点でその差はわずか。2人ともフリーで十分メダルを狙える。

 冒頭の4回転トーループで失敗したものの、残るジャンプをすべて決め、ステップ、スピンでもレベル4の評価で挽回した。日本から駆けつけた多数の女性ファンはもちろんのこと、海外のファンからも歓声を浴びた。演技後、報道陣から順位を初めて知らされると「4番? 4回転でミスしたので(フリーの)最終グループ入り(上位6人)は厳しいかなと思っていました。びっくりというか、ほっとしています」と安堵した。

 3度目の五輪だが、この日は「今日は緊張して体が動かなかった」と独特の雰囲気に影響されたという。それでも、ガチガチにならないのが“氷上の芸術家”だ。演技を始める構えをしても、いつまでも地元ファンが声を出し続け、曲がかかるのが遅れたが「なんか『ローシーア』って言ってましたよね(笑い)。いつ始まるかなとは思っていたけど冷静で、動揺はなかったですよ。びっくりしましたけどね」と笑い飛ばした。

 大会前は思わぬとばっちりを受けた。“自称”全聾(ろう)の作曲家・佐村河内守氏(50)が作ったとされたSP曲が、実はゴーストライター新垣隆氏(43)の手によるものだったとわかり大騒動に。ただ、どうやら陣営はソチ五輪をもって「ヴァイオリンのためのソナチネ」を最後とするようだ。

 今季限りの引退を表明した高橋は、すでに来月の世界選手権(さいたま市)の代表に選ばれている。高橋を知るフィギュア関係者の話。

「現段階ではやはり変えるようです。五輪が終わって1か月ほどしかありませんが、さすがにまた使うとなれば、ずっとこの騒動が大輔について回ることになる。引退するのに、それはいくらなんでもかわいそうですからね」

 現在は五輪に集中しているため、どの曲にするかはまだ決まっていない。世界選手権を辞退する可能性もあるが「日本で開催されるので、日本のファンに見せる最後の試合になる。やはり本人は出場したいんですよ」と同関係者。準備期間1か月は短いが、騒動から解放されることを考えれば、苦にはならないだろう。今回で「ヴァイオリンのためのソナチネ」は見納めということになる。

 偽ベートーベン・ショックの前には、度重なる故障にも打ち勝ってきた。「4位にとどまっているのは希望を持っていいのかも。フリーでは希望を捨てずに、やれることやりたい。明日何が起こるかは分からない。諦めず、精一杯演技するだけです」と力を込めた。