今季W杯の開幕からの連勝が「4」でストップしたスキー・ジャンプ女子のエース、高梨沙羅(17=クラレ)が6日に帰国した。次戦の札幌大会2連戦(11、12日、宮の森ジャンプ競技場)での巻き返しを誓ったが、一方で何とも不気味な伏兵が出現。W杯第5戦で高梨を破ったイリーナ・アバクモワ(22=ロシア)に、日本勢から警戒の声が相次いでいる。“ロシアの怪物”がソチ五輪での金メダル争いに絡むことは必至の情勢だ。

 ロシアのチャイコフスキーで行われた個人第5戦で3位に終わった高梨は「自分のジャンプの調子を上げることが最後までできなかった」と振り返った。ジャンプ台の曲線をつかむことができず、飛び出しのタイミングが狂ったという。だが、今後の不安材料につながることはなさそうだ。敗因は試合当日の悪コンディションが影響したと捉えており、札幌大会でのリベンジに自信を見せている。


 氷点下20度まで冷え込み、高梨の右頬には寒さと乾燥で縦2センチほどの裂傷ができたほど。修正能力には定評があるだけに、高梨は「次、またロシアでそういう環境の中で整えていかなきゃいけない場面であっても、しっかり向かっていけると思うので、いい勉強になった」と前向きだった。


 とはいえ、これでソチ五輪に向け、安心できるとは限らない。優勝したアバクモワが高梨を脅かす存在として急浮上。彼女の実力について、日本勢からは「たぶん、このままだとオリンピックでもやると思いますよ」(渡瀬あゆみ)、「去年は自分と同じぐらいだったのに、急に成長してきた。調子いいんで、ノリにノッてる。オリンピックでも来ると思います」(山田優梨菜)と警戒の声が噴出した。


 アバクモワは夏のグランプリ(GP)では表彰台にすら立つことができなかったが、冬のシーズンに入ると別人のように躍進。開幕戦こそ16位だったものの、あとはすべて3位以内に入り、総合ランキングでも2位につけている。


 しかも、彼女は初の冬季五輪を控える母国ロシアの手厚いサポートを受けているという。渡瀬は「ロシアはすごい。見ていても力の入れ具合が違う。国が一つになっていると感じる。合宿もいろんな場所でやっているし、ライフスタイルの中に取り込まれている」と告白し、ロシアの強化システムをうらやんだ。


 最大のライバルである“もう1人のサラ”ことサラ・ヘンドリクソン(19=米国)がケガで不在の状況。高梨はモチベーションの低下も示唆したが、背中にピタリとつける“ロシアの怪物”に気をつける必要がありそうだ。