新型コロナウイルス禍で来年夏に延期となった東京五輪の開催1年前の23日に国立競技場(東京・新宿区)で1年前セレモニー「一年後へ。一歩進む。~+1(プラスワン)メッセージ~TOKYO2020」が開催された。

 白血病から復帰を目指す競泳女子の池江璃花子(20=ルネサンス)がピッチに登場し、全アスリートと関係者に熱いメッセージを発信した。

 聖火がともるランタンを手にした池江は「逆境から這い上がっていく時にはどうしても希望の力が必要。希望が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても前を向いて頑張れる」などと自身の闘病経験と重ねた思いを口にし「1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いてほしいと思います」と締めくくった。

 無観客ながら報道陣、関係者から拍手が鳴りやまず、ピッチから引き揚げる際には「感極まって目に涙があふれていた」(場内スタッフ)という。

 演出を担当したクリエーティブディレクターの佐々木宏氏(65)が「強いメッセージを発するに適役」と言うように、今回のプロジェクトは「池江ありき」で6月上旬に持ち上がった。

 東京五輪内定アスリートではなく、病気から這い上がる池江に開催ピンチにある五輪を重ねたようだ。メッセージは池江自身が考え、会場に流れた映像に出てくる聖火も「撮影のためだけに保管場所からいったん移送した」(別の関係者)という力の入れようだった。

 セレモニーは大成功。中止の世論を恐れる大会組織委員会にとって、この日の池江はまさに〝救世主〟となった。