【どうなる東京五輪パラリンピック(61)】隠された思惑とは? 新型コロナウイルスの影響で来夏に延期となった東京五輪を巡り、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会はコスト削減の観点から「華美なものとはせず、簡素(シンプル)な大会の実現」の方針で一致。森喜朗会長(82)は「コロナによって世界中が混乱している。従来のような華美なお祭り騒ぎが果たして多くの人々に共感を得られるだろうか、と考えなければいけない」と語った。

 ここで気になるのは、何が簡素化の対象になるのか、という点。現段階では具体的に明かされていないが、組織委の“裏メッセージ”が共同声明に記載されている。IOC、組織委、東京都、日本政府の合意のもとで作成された公式文書にはハッキリと「華美なものとはせず」の一文が載っており、森会長も「華美」の言葉を使った。だが、実は英語版の文書には「simply(簡素な)」の単語はあるが、「華美ではない」のフレーズは一切ない。つまり、日本側の判断で付け加えた表現なのだ。

 これについて組織委関係者は「シンプルとだけ表現すると『安かろう』といったイメージになる。この一文を入れることが極めて重要という話になった」と説明。つまり、決して「チープな大会」ではなく、「華美」の言葉通り「華やかすぎて不相応」ではないという意味だ。あくまで無駄な経費を削減し「いたずらに派手にはしない」という意図が隠されている。

 この方針を踏まえると大会自体の尊厳をおとしめない範囲でのコスト削減が考えられる。一部では開会式の演出が削られるとの意見もあるが、組織委が公表する予算を見る限り、輸送、テクノロジー、セキュリティー、マーケティングなどのほうが費用は莫大。「華美ではない」の意図に添うと、大会本番までの盛り上げイベントなどが対象になることが考えられる。来夏はいつもとは違う、静かな入り方となる五輪となりそうだ。