【どうなる?東京五輪パラリンピック(60)】受け取るか、見送るか――。五輪競技団体が「融資」を巡って頭を悩ませている。

 新型コロナウイルス禍による各競技団体の資金繰り悪化を受け、中小企業を対象とした日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」がスポーツ団体にも適用されることが日本オリンピック委員会(JOC)の調査によって判明。この融資は無利子無担保で、4日の説明会にはJOC加盟の約25団体が参加したという。今後は審査を経て融資が確定する。

 財政が困窮する競技団体は大喜びと思いきや、実情はちょっと違うようだ。説明会に参加した団体の中には「たとえ無利子とはいえ、借りたものは返さないといけないので…」「制度があるからといって貸し付けに飛びついてメリットはあるのか」などと慎重な構えを見せているところもある。

 熟考の末に見送ることを決めた団体は「公益法人は基本的に蓄えを残してはいけない。1年が終わった時の収支をプラスマイナスゼロにするため、収入はすべて使わないといけない」と説明した。また「やみくもに借りても結局は負債を増やすだけ」「今、収支を精査している。焦って借りることはしない」と手を挙げない方針を決めた団体もあった。

 一方、日本ボクシング連盟は「私たちはチケットを販売しておらず、すべての大会が無料で観戦できるので、もともと大会開催はプラスにならないんです」と特殊な事情を明かす。各大会の事業収益がないため「年度終わりで4000万円の赤字の可能性がありましたが、1000万円くらい残りそう」と、コロナ禍で逆に収支がプラスに転じるという。

 このように各競技団体の台所事情は千差万別。「今、1社ずつ話し合っている」とスポンサー離れを懸念する協会もある。いずれにせよ誰も経験したことのない未曽有の事態に、スポーツ界の混乱はまだ続きそうだ。