小谷実可子氏 本番会場を使える開催国だからこそ五輪延期をプラスに

2020年04月28日 16時40分

小谷氏は五輪の1年延期にも前向きだ

【どうなる?東京五輪・パラリンピック(28)】 逆境を味方に――。1988年ソウル五輪アーティスティックスイミング(AS)ソロの銅メダルで日本オリンピック委員会(JOC)の理事を務める小谷実可子氏(53)が本紙の電話取材に応じ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期となった東京五輪に言及。自ら経験した招致活動を振り返りながら、延期した「1年」をプラスに転じさせる数々のアイデアを提案した。

 小谷氏は1980年代後半から90年代前半にAS(当時はシンクロナイズドスイミング)で日本のエースに君臨。引退後も世界オリンピアンズ協会理事、JOC理事など活動の幅を広げてきた。

 五輪の喜びを知る小谷氏は、1年延期となった東京大会について「考え方を変えれば五輪史上に残る、二度とない特別な大会になる」とポジティブだ。もちろん、現実も見つめている。世の中は今、五輪を語れる状況ではないことを踏まえて現役アスリートへこんなメッセージを送る。

「(2011年)東日本大震災の時もそうでしたが、心のどこかで『自分はスポーツなんてやっていていいのか?』と迷っていると思う。でも、選手はやればいい。スポーツを通した社会貢献などは私たちがやる。だから現役選手は今、頑張っていろんなものを乗り越える。五輪が開かれた暁に最高のパフォーマンスをすれば社会に元気を与えられるんです」

 これまで98年長野、08年大阪、16年東京、そして20年大会と、4度も五輪招致活動に尽力。「総理大臣、政界や財界のトップ、アスリート…みんながチームの一員みたいに同じ方向へ突き進んだ」と振り返りつつ、訪れた世紀の瞬間には「東京五輪という生命が誕生する際、分娩室の中で命を取り上げる助産師の汗を拭いていたような感覚」と表現した。「これからどんな喜びが待っているんだろう」。そんな思いで7年間を過ごしてきたという。

 だからこそ、どんな状況でも来年の開催成功を願う。選手村の「副村長」という肩書もある小谷氏は「せっかく1年間という空白の時間ができた。選手村の跡地の居住予定者の方々に向けたイベントやトークショーを選手村で行って、より五輪の素晴らしさを分かってもらいたい」と提案。延期によって選手村の入居者との契約問題も持ち上がっているが、実現すれば契約者の“留飲”を下げるだろう。

 あくまで「コロナが終息したら」の前提ながら「1年」をプラスに変えるアイデアはたくさんある。「本番会場を使えるのは開催国の一番のアドバンテージ。もし施設使用が許されるのなら、本番会場で合宿や練習をどんどん行い、例えば(東京)アクアティクスセンター(水泳会場)のダイビングプールを一般開放し、すぐそばの50メートルプールで五輪を目指す選手の練習を見られるようにしたり…。強化に役立ちつつ、地元の人々への五輪ムーブメントにできないでしょうか」

 今も小谷氏は様々なアイデアを関係者に提案している。この思いが五輪の神に届くだろうか。