【パラヒーローズ】車いすテニス・田中愛美 退路を断ちすべてを捧げ来年のヒロインを目指す

2020年04月10日 11時00分

最新鋭の車いす用タイヤの提供も受け、田中は笑顔でプレーを続ける

【東京2020 パラヒーローズ 見据える先に描く夢とは(最終回)】来夏はスマイルシンデレラから目が離せない。車いすテニスの田中愛美(23=ブリヂストンスポーツアリーナ)は、東京パラリンピックが延期となっても、前を向いている。先行きが見えない状況でも、努力を続けるヒロイン候補が、テニスを通して伝えたい思いとは――。

「やっぱりか~、という感じで、少し残念ではあったけど覚悟はしていた。2年後(の開催)もあり得ると思っていたので、1年の延期ならと思った」。田中は、3月24日に延期の一報を聞いた瞬間を冷静に振り返った。

 選手にとって急な日程変更はダメージが大きいはずだが、田中は延期をプラスに捉えている。「いろんなショットが打てるようになったけど、試合でどう組み合わせていくかっていう部分はまだ考えきれていない」と課題を理解しているからこそ「もう少し時間があればと思っていたので自信を持って本番でプレーできるようになると思う」と気持ちをすぐに切り替えた。

 東京パラリンピックでの田中の目標は“メダル獲得”だ。悲願達成に向け、管理栄養士のもとで食事を徹底管理。大好物のアイスも週1回に抑えている。さらに、テニスに集中するため、大学を中退した。

 田中が退路を断ち、ここまでテニスにすべてをささげるのには訳がある。お世話になった方々に恩返しをしたいという思いを持っているからだ。もともとケガの後は「思い通りにいかないことが多すぎて、テニスのことが嫌いになると思った」とテニスをやるつもりはなかった。しかし、高校時代の恩師に「プレーヤーとして戻ってきなさい」と言われ、一念発起。高校3年の夏には「本格的に指導してくれるコーチを探さないと」と現在の所属先にアポなしで訪問した。その熱意がコーチらに認められ、社員として所属することになった。奇跡的に歯車がかみ合ったことで、再びテニスの世界に戻ってきた田中は専用コートの整備や世界に1つだけの車いす用タイヤの提供等のサポートを受けながら、日々練習に励んでいる。

「私はこんなプレーがしたいっていうのがあるので、みんなのおかげで車いすテニスができているってところを見せたい」。感謝の思いを胸に、東京パラリンピックのヒロインを目指し、己の道を突き進む。

 ☆たなか・まなみ 1996年6月10日生まれ。熊本県出身。中学校でテニスを始めると、3年時には部長として約80人の部員をまとめた。高校1年の冬に自宅で転落事故に遭い、車いす生活となった。それでも、車いすテニス転向後は「ボールを打つ練習よりも、走る練習をずっとやっていた」と地道に鍛え上げたスピードを武器に、世界の舞台で大活躍。東京パラリンピックでは、メダル獲得が期待される。また、人気アイドルグループ「乃木坂46」の大ファンで、エースの白石麻衣(27)が推しメン。