【どうなる?東京五輪・パラリンピック 緊急連載(7)】見過ごせない“闇”が浮き彫りとなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で史上初の延期となった東京五輪。すでに来年7月23日開幕が決定し、大会組織委員会の森喜朗会長(82)は「かつてない挑戦」と再スタートへ腕をぶしている。

 一方、主役のアスリートたちはどうか? 一時は前代未聞の事態に混乱したが、日程が確定したことで一様に安堵の表情を浮かべる。国際オリンピック委員会(IOC)との電話会談に出席した棒高跳び選手で日本オリンピック委員会(JOC)の沢野大地アスリート委員長(39=富士通)は「世の中がこういう状況の中、アスリートというより国際社会に生きる一員として延期を支持したい」との見解を示し、方針が固まるまでの時期を「中止になるのか、延期になるのか、開催されるのか。不安定な状態でトレーニングしていた時期は非常につらかった」と振り返った。

 コロナ猛威が加速した3月、全世界の世論が「延期」に傾いていたにもかかわらず組織委、JOCの幹部は通常開催を強調。意を決して「延期すべき」と主張する関係者が現れるたびに“火消し”に奔走し、中には叱責の声まで上がった。この上層部の異様な姿勢は日本のアスリートに大きなプレッシャーを与えたようだ。沢野委員長は「選考会が行われると言われれば選手はそこに向けて頑張るしかない。与えられた環境でやるしかない。(声を)上げてもいいのか?と悩みながらトレーニングを続けてきた選手が多い気はします」と語る。

 実際、海外アスリートは「延期」を求める意見を積極的に述べる中、開催国の日本人選手は“貝”になった。選考に影響するかも…と、誰もが感じた正論を堂々と言えない。そんな雰囲気をJOC、大会組織委がつくっていたとすれば由々しき事態だろう。1年後の再スタートへ向けて今後もさまざまな懸案事項が待ち受けるが、これを教訓にアスリートが意見しやすい環境づくりが必要だ。