【バドミントン】奥原“希望”は捨てない

2020年03月28日 16時40分

延期決定前、奥原は本紙の取材に応じて色紙にメッセージを書いていた

【どうなる?東京五輪・パラリンピック 緊急連載(3)】こんな事態を誰が想像しただろうか。56年ぶりの東京五輪が新型コロナウイルス感染拡大の影響で史上初の「延期」となり、スポーツ界は混迷を極めている。前代未聞の発表の瞬間、選手、コーチ、関係者は何を思い、どう感じたのか? 緊急連載の第3回はバドミントン女子エースでシングルス金メダル候補の奥原希望(25=太陽ホールディングス)が登場。混乱の中、見つめているものは――。

 3月某日、奥原は本紙が差し出した色紙に「2020年8月3日の私へ」と題し、夢舞台に立った未来の自分へ「悔いなければよし。次いくぞー!!」とメッセージを送った。「私のバドミントン人生で最大の目標」と位置づける東京五輪だったが、数週間後に「2020年8月3日の自分」は“幻”となった。

 衝撃的な発表がなされた24日夜、奥原は都内の自宅にいた。「1年程度の延期」を耳にし、さまざまな感情が胸に突き上げてきた。16年リオデジャネイロ五輪では日本人初となるシングルスのメダル(銅)を獲得。その後、自ら「前例のない挑戦」と言い放ち、過酷なプロの道を選んできた。

 すでに確実としていた五輪出場権について、正式な発表はまだない。ただ、奥原は驚くほど前向きだ。メンタルを保つ自信はあるかの問いにはこう答える。

「自信というか、臨機応変にメンタルとコンディションも含めて対応していかないといけないと思っています。もともとバドミントンは環境やスケジュールにその都度対応する競技なので、世の中の決断に従順する対応力や、切り替えの早さは持ち合わせていると思います」

 ひとたび覚悟を決めたら一直線。そこに迷いやブレは一切ない。いつだって、そうやって生きてきた。誰もが経験していない事態に陥ろうとも、自らの信念が崩れることはない。

 だが、選考レースは先行き不透明で、今後も見通せない。奥原は「意見を発信することはとても難しいです。人それぞれ状況や都合が違うので、どの決断が正解なのか、何を基準に判断したらいいのか…。私が上の人の立場になっても決断はすごく悩むと思います」と胸中を明かす。そこにはアスリートである前に、一人の人間としての矜持がある。

「メンタルやコンディションも含めて、今世界中のアスリートは困惑していると思います。ただ、オリンピックは平和のお祭りです。なので世界平和、世界中が通常生活に戻ることが先なのかなと。アスリートだけが優先されるべきでもないと思います。きれいごとですが」

 夢舞台への道のりは振り出しに戻ったが、目指す姿勢に変わりはない。本当の挑戦はここから始まる。