【どうなる?東京五輪・パラリンピック 緊急連載(2)】ベストな開催時期はいつなのか。新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年程度の延期が決まった東京五輪は、改めて会場確保や周辺整備といった準備が必要となった。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(66)は開催日程を夏に限定せず柔軟に対応する方針だが、現状では7~8月の大枠を維持して来夏への一括延期が有力だ。一方で気象の専門家は来夏なら“猛暑五輪”となる可能性を指摘した上で「初夏五輪」を提案した。果たして正解は――。

 史上初の1年程度延期という措置が決まり、関係機関は新たなゴールを設定することになった。ただ、選手選考、チケット、ボランティア、会場確保など課題は山ほどある。来年7月には水泳の世界選手権(福岡)、同8月に陸上の世界選手権(米国)が予定されており、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長(76)も「協力をいただくタイミングになれば、真剣に意見交換をしたい
が、まだ何も決まっていない」と話していたほどだ。

 そこでIOCバッハ会長は「遅くとも夏までに開催したいということで広い視野で検討できる。夏だけには限定していない」とすでにコメントし、開催時期に固執していないことを強調。英メディアも「IOC委員が『桜五輪』(来年4月)の可能性を提案した」と報じた。選択肢は広がりつつあるが、依然として有力なのは「来夏開催」だ。そんな中、気象学を専門とする三重大学の立花義裕教授(58)は来夏となった場合の“猛暑”を不安視する。

「長期予報は非常に難しい」としながらも、今年の暖冬を根拠に「日本だけではなく、北半球が観測史上最高に暖かかったんです。その原因は北太平洋、北大西洋のほとんどの海面水温が非常に高かったからだと考えていて、これはめったになかったことですね」。そんな海面水温の状況が続けば「暖冬の影響を夏まで引きずり、今の水温なら(猛暑は)あり得ます。そして、今年の夏が暑ければ猛暑の影響が海に残って次の夏まで残る可能性はあると思います」。つまり今年はもちろんのこと、来年夏も厳しい暑さが予想されるという。

 これまで7月から8月にかけて行われてきた祭典だが、バッハ会長の発言通り今回ばかりは流動的になっている。そこで立花氏は専門家の立場として「アスリートファーストなら夏(開催)はやめたほうがいい。僕らからすれば常識なんですけどね」と話した上で「来年5月開催」を推す。

「少なくとも日本の場合は夏よりも春のほうが雨が少ないので、梅雨の前とか5月が一番いいと思うんです。日照時間も長いので、朝早くからできるし。夏を回避するのは確実にいいことだと思います」

 猛暑五輪の危険性はかねて問題視され、マラソン・競歩の札幌移転につながったことは周知の事実。仮に5月開催となれば、すでに1年延期が決まっているサッカー欧州選手権(来年6~7月)や前述した水泳、陸上の世界選手権といった大規模な国際大会との“衝突”も回避できる。アスリートの熱い戦いは暑い季節でなくとも楽しめる。五輪後に開催されるパラリンピックの時期をどう設定するかの課題はあるが、「初夏五輪」は一考に値するかもしれない。