五輪1年延期に待った! 国際競技連盟会長が「今秋開催」のメリットを提言

2020年03月24日 19時01分

東京五輪の開催延期は影ではなく光をもたらすのか

 究極の“ケガの功名”となるのか。新型コロナウイルス感染拡大の影響で開催が危ぶまれる東京五輪に関し、国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会はようやく7月24日開幕からの「延期」を容認した。残る問題は開催時期となったが、IOC委員で国際体操連盟の会長を務める渡辺守成氏(61)が本紙に「今秋開催」のメリットを提言。国際競技連盟(IF)のトップとして正式にIOCに提案することも明かした。実現すれば当初の夏開催より理想的、すべての問題を解決する最高の結末となるはずだが…。

 これまでIOC、組織委などと歩調を合わせ、一貫して「通常開催」を訴えてきた渡辺氏も、世論の流れは止められない。「延期」が決定的となったことで新たなストーリーを描き出した。現在、活動拠点のスイス・ローザンヌから一時帰国している同氏は、延期への流れを受け止めた上で「秋が最も理想的だと思う」と持論を述べた。

 まず、複数の専門家が口にする「1年延期」、「2年延期」については「代表選考をやり直す必要が出てくる。なぜかというと、すでに代表に選ばれている57%の選手の大部分は1年以上前の成績で選考されているから。2年延期となると、下手したら3年前の成績で選ばれたことになり、それでは世界トップが集まる大会とは言えない」と指摘。その上で次なる問題を説明する。

「選考をやり直すための予選会を設定できないんです。今年は五輪イヤーなので世界選手権がない。今年秋、来年春に新たに予選会となる世界大会をつくらなければいけないが、もう会場が押さえられない。それに体操だと1大会で15億円くらいかかる。水泳や陸上はもっとかかる。これは困難ですよ」

 そこで浮上するのが「今秋開催」だ。渡辺氏は消去法というより、むしろ最も理想的な時期だと主張する。

「今、中断している予選会をコロナが落ち着いた6、7月くらいに再開すれば秋には間に合う。そうなると、すでに内定している57%の選手の権利を確保できた上に、その延長で残りの43%も選出できる。だから秋開催が最も好ましいです」

 数ある五輪競技団体の中で陸上、水泳、体操は“御三家”と言われるが、その一角を占める体操連盟トップの発言は重い。今後、IOCは各IFから聞き取り調査をするが、トーマス・バッハ会長(66)から厚い信頼を得ている渡辺氏は「もちろんIOCに提案していく」と「今秋開催」を訴えることも明言。ボクシング運営の座長も任されており、この提案が実現化される可能性は十分だ。

 競技場確保、人員再確保の問題も2021、22年の開催よりは難しくないはず。最大の難問とされる延期にかかる追加の費用負担も、年内開催ならグッとお安くなる。一方、秋開催では欧米メジャースポーツとのバッティングで生じる放映権問題が障害となるが、12年ロンドン五輪の組織委員会会長を務めた国際陸上競技連盟会長のセバスチャン・コー氏(63)はすでに「必要があるなら日程を動かさなければならない。それは可能だ」と10月開催にGOサインを出している。

 そもそも、現段階では欧米メジャースポーツも今後の開催自体が白紙。このいまだかつてない状況なら、7月15日~8月31日までに大会を設定するIOCとの取り決めなど有名無実だろう。

 秋開催となれば、懸念された暑熱対策や熱中症問題もクリア。札幌へ移転したマラソン・競歩も東京へ戻せる。かねて夏開催を否定してきた前参議院議員のアントニオ猪木氏(77)も「本来、一番いいのは10月。夏を外すのは決まっているでしょ!?」と本紙に語り、後押しする。何より日本が誇る秋の「美」を世界に“おもてなし”できるのは願ったりかなったりとなる。

 56年前、高度経済成長期の日本に夢と希望を与えた東京五輪は10月の秋晴れの下で開会式が行われた。すったもんだの末、その感動を再現できるとすれば“まさに災い転じて福となす”といったところ。もちろん、それまでに新型コロナウイルス禍が終息すれば、の話だが…。

【国、組織委、JOCが手のひら返し】これまで一貫して「通常開催」を強調してきた関係各機関が“ドミノ方式”で延期について言及した。まずは「4週間以内に結論を示す」とIOCが声明を発表すると、安倍晋三首相(65)、東京都の小池百合子知事(67)も即座に反応。いずれも中止は選択肢にないとし、歩調を合わせる形となった。

 IOCのバッハ会長と話し合ったという大会組織委の森喜朗会長(82)は「延長の件については議論しないわけにはいかないということ」とコメント。その上で1、2年後も現職を務めるかとの問いには「こういう質問は極めて失礼。私の命があるかどうかも分からないので、何とも言えない」と気色ばんだ。

 一方、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長(62)は「国内よりも世界のほうが刻一刻と状況が悪化している中で、そういうこと(延期)も考えないといけないのは頭にあった。でも、聞いたときには衝撃が走った」という。また「50年、100年に一度の国家的プロジェクト。大会成功のために自国選手の活躍が不可欠ということでかなり国にも協力してもらった」と言い、強化費などの金銭面については「これから検討していかないと」という。

 それぞれ立場は異なるが、手のひら返し感は否めなかった。