【東京2020 パラヒーローズ 見据える先に描く夢とは(7)】今回の連載「パラヒーローズ」は特別編として、アイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともか(28)が登場。「車いすアイドル」として活躍する一方で、パラスポーツの普及活動にも取り組んでいる。パラリンピック開幕まで半年を切り、注目度が高まっているからこそ、伝えたい思いがあるからだ。 

 猪狩は「ケガをする前までは、どちらかといったらパラリンピックにほぼ関心がなかった」と当時を振り返るが、事故に巻き込まれたことで人生が大きく変わった。

 入院中だったある日、転機が訪れた。百獣の王の異名を持つタレント・武井壮(46)がお見舞いに来てくれた際に、パラスポーツの魅力を語ってくれたのだ。

「そこで一気に興味を持ち始めた」と退院後は積極的にパラ関連のイベントに参加。様々な競技を見る中で「今の自分の体で何ができるかを考えて、自分が出せるベストをすごく模索している。その姿を見て、この選手がかわいそうとかなんて絶対に思わないと思う」とパラスポーツの魅力に取りつかれ、昨年6月にパラリンピック応援大使への就任を果たした。

 ただ、世間のパラスポーツに対する視線はまだまだ冷たい。「障がいを持っている方に対するイメージってどうしてもかわいそうとか、なんか不幸なのかなとか、そういったマイナスの要素が大きいと思う。まだ(パラスポーツのことを)全然知られていないので」と表情を曇らせた。

 だからこそ、今回のパラリンピックは大きな意味を持っているという。猪狩は「パラスポーツはきっと障がいを持っている方とそうでない方をつなぐいいきっかけになると思う。それをきっかけに社会がよくなっていったらいいな」と期待を込める。

 もちろん簡単ではないことも理解している。「パラリンピックが終わったら、そこがスタート。ブームで終わらせたくない。パラスポーツ体験とか、様々な方の話を聞く時間とか、触れ合う時間とかは絶対に必要」と、今後もパラリンピックに携わっていくつもりだ。

 9月には「仮面女子」の卒業を発表している。障がい者と健常者の懸け橋になるため、アイドルの枠を超えた活動で「パラヒーローズ」の仲間入りを目指す。

 ☆いがり・ともか 1991年12月9日生まれ。埼玉県出身。2014年に芸能活動を始め、17年に「仮面女子」へ加入。18年4月、強風で倒れた案内板の下敷きとなり下半身不随に。それでも、約4か月半のリハビリを経て復帰。現在もステージに立ち続ける。2月からは、ユーチューブでパラスポーツの魅力を発信。大の西武ファンとしても知られ、本拠地メットライフドームで4年連続となる始球式を行うことがひそかな目標と語る野球少女の一面も。154センチ。