東京五輪マスコットも風評被害 バッハ発言、米の非常事態宣言が追い打ち

2020年03月15日 11時00分

ホワイトハウスで非常事態宣言をしたトランプ大統領(ロイター)

 これは痛烈だ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京五輪の「中止」「延期」の声が飛び交う中で、禁断のパロディー画像が米国内で出回っている。森喜朗会長(82)率いる東京五輪・パラリンピック組織委員会が公募した大会マスコットキャラクターが「次の就職先」を探している不謹慎なもの。まるで大会開催に燃える森会長をあざ笑い、先ごろ「延期」と発言したドナルド・トランプ米大統領(73)を後押しするような皮肉たっぷりの“作品”だ。その背景に迫った。

 中止か、延期か、それとも無観客か――。東京五輪の開催を巡り、世界中で様々な意見が出ているが、ここ数日で世論は一気に「延期」に傾いてきた。先月末、国際オリンピック委員会(IOC)の最古参のディック・パウンド委員(77)が突如として「延期」を提言。今月には電通元専務で大会組織委員会の理事を務める高橋治之氏(75)が「2年の延期が現実的」とぶち上げた。森会長は「とんでもない」「方向や計画を変えることは全く考えていない」と“火消し”に躍起で、改めて通常開催を強調したが「延期」への流れは止まらない。世界保健機関(WHO)がついに「パンデミック(世界的大流行)」を宣言し、追い打ちをかけるようにトランプ大統領が「無観客で開催するよりも、1年延期するほうがいい」と発言。さらに12日にはIOCのトーマス・バッハ会長(66)がドイツメディアの取材に「開催はWHOの助言に従う」とここにきて初めて含みを持たせたのだ。

 橋本聖子五輪相(55)は「IOCや大会組織委員会も延期や中止は一切検討していない」と力説。日本政府も予定通りに開催する方針を示すが、影響力の大きい米大統領の「延期」発言とバッハ発言に関係各所で困惑が広がっている。本紙も既報したように、新たな日程調整には難航が予想され、財政負担も莫大なものとなる。また、すでに決定した競技をはじめ代表選考をどうするのかという問題もある。

 そうした中で、前述のトランプ発言とシンクロするように米国内で出回り始めた「1コマ漫画」が火に油を注いでいる。その主人公は大会組織委員会が著作権を保有する公式マスコットキャラクターの「ミライトワ」と「ソメイティ」。新型コロナウイルス騒動が放映されるテレビをソファに座って見ているミライトワが、マスク着用のソメイティに「SHOULD WE START LOOKING FOR WORK?(次の仕事を探したほうがいいかな?)」と話しかけている。

“開催一択”で通常開催を目指す日本国内の関係者を逆なでするような痛烈な風刺だ。本紙が出どころを調べると、この漫画は米国の某スポーツ誌に実際に掲載されたものだった。世相を皮肉たっぷりに斬る米国らしく、痛快なパロディー画像はあっという間にSNSで広まっていった。

 背景には米国内の現状がある。いまや「マスクより銃が売れる」と言われるほど、米国はパニック状態。今月に入って米国株式市場でダウは過去最大の下げ幅を記録した。スポーツ界では、米プロバスケットボールリーグ(NBA)がシーズンを中断、野球のメジャーリーグ(MLB)も開幕戦を延期、アイスホッケーのNHLやサッカーのプロリーグMLSも中断となった。

 さらにゴルフの米男子ツアーでは「プレーヤーズ選手権」が中止となり、松山英樹(28=LEXUS)がコースレコードタイで回った初日の記録がなかったことに…。4月9日に開幕予定だったゴルフの祭典「マスターズ」も延期が決定するなど非常事態となっている。

 この手のジョークは米国内ではよくあるが、さすがに今回のパロディーは「やり過ぎ」との意見が多い。まさにパンデミックの危機的状況が生み出した副産物――。今夏、この画像が笑い話になっていればいいが…。