東京五輪で役立つ「世界に恥をかかない観戦マナー」と「独自応援方法」

2020年01月22日 11時00分

テニスは観客の厳格なマナーに支えられている(ロイター)

【東スポ2020 現場最前線】56年ぶりの東京五輪開幕まで残り6か月余り。日本で行われるスポーツの祭典は世界に最高の「おもてなし」を提供すると同時に、日本の文化と品位を全世界に発信する貴重な3週間となる。特に会場での観客の立ち居振る舞いは重要だ。各競技には独自の観戦マナーや応援方法が存在し、知らないと大ひんしゅくの危険性も…。そこで本紙は「世界に恥をかかない観戦マナー」を大特集。チケットに当選し、観戦を予定している人は要チェックだ。

◇陸上=五輪の花形といえば陸上。ここにも様々な観戦マナーが存在する。

 複数の陸上関係者は、最も避けてほしいのが「トラック競技のスタート時のザワザワ感」と口を揃える。選手にとってスタートの合図は最重要。その一瞬のために「4年間を費やした」といっても過言ではなく、全神経を「音」に集中させる。

 9月の世界陸上男子100メートル準決勝で敗退した日本記録保持者のサニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)が「音が小さくて全然聞こえなかった」と出遅れの理由を語ったが、仮に観客が原因だとしたら一大事だ。当日はオーロラビジョンなどで「静かに!」の指示が出たら絶対に物音を立ててはいけない。

 その正反対が跳躍競技だ。よく高跳びの選手が跳躍前に観客へ向かって手拍子を求めるケースがある。元陸上選手によれば「自分の好きな手拍子のテンポで跳ぶといいパフォーマンスになる」と証言。リズムを刻む速さやパターンは選手の好みに合わせて行うといい。

 ちなみに、跳躍競技とトラック競技のスタートが重なりそうな場合は審判団がコントロール。会場のアナウンスに従っていれば問題ない。

 また、日本陸上連盟関係者によると「女子選手をいやらしい目線で撮影するマニアが多い」という。大会中は撮影禁止エリアもあるが、たとえ撮影OKの場所でもモラルが問われる。正当な競技の写真と卑猥な写真の線引きは難しいが、巡回する警備員に抑止されるような疑わしい行為は避けるべし!

◇テニス=錦織圭(30=日清食品)、大坂なおみ(22=同)の男女エースが出場するテニスには厳格な観戦マナーが存在する。団体戦では「パルチザン・クラウド」というルールも存在し、観客が悪質な応援をすると相手側にポイントが与えられるほど厳しい。日本テニス協会の倉光哲理事(75)は基本事項として「プレー中の席の移動はもちろん、選手がサーブのモーションに入ったら絶対に動いてはいけません」と念を押す。観客が動いて選手がサーブを中止するシーンはよく見られ、先日は観客の一人がくしゃみし、大坂が苦笑してサーブをやめたことがあった。プレー中はトイレにも行けないので、水分補給の頻度にも要注意だ。

 また、倉光氏は「相手のミスで大喜びするのは日本人の品位が問われる。例えばダブルフォールトのように、明らかに相手の失敗でポイントが入った際に喜ぶのは絶対に控えてほしい」と警鐘を鳴らす。9月の東レ・パンパシフィック・オープンで優勝した大坂は「日本の皆さんは私の対戦相手がいいプレーをした時も拍手してくれる」と絶賛。倉光氏は「相手国の選手がいいパフォーマンスをしたら拍手する。日本独特の奥ゆかしさ、礼儀をもって応援していただきたい」と力説する。

 ちなみに、かつて元世界4位の伊達公子さん(49)が観客に「ため息ばっかり!」と激怒したのは有名な話。過度な“ため息”も選手をイラつかせるのでご法度だ。また、元女王のシュテフィ・グラフ(50=ドイツ)が「結婚して!」とヤジられた際、瞬時に「あなたいくら持ってるの?」と切り返して観客を沸かせた“神対応”はユーチューブでバズっているが、これは極めて珍しい例なのでくれぐれもマネしないように。

◇ゴルフ=今や“時の人”となった渋野日向子(21=RSK山陽放送)によってゴルフの注目度も高い。そこで注意しなければならないのが「選手がショットを打つ時は動かない、音を立てない」という基本マナーだ。ショットを打ち終わるまでは報道カメラマンでさえも写真撮影は厳禁。スポーツ紙に載る写真が全て打ち終わった後というのは、そのためだ。もちろん携帯電話の通話も決められた場所以外でしてはいけないのでご注意を。

 その基本事項を踏まえた上で、ゴルフ記者歴20年の本紙記者はこんな注意事項を挙げる。

「盲点はコンビニの袋。飲み物や食べ物をビニール袋に入れて持ち運ぶと、結構シャカシャカと音が鳴って、気にする選手が多いです」

 一番いいのは布製の袋。映画館にいる感覚で、あらゆる「音」に気を付けなければならない。

 当日の服装も注意したい。「選手に付いて回る際は5キロから10キロは歩くので、ハイキングで履くようなスニーカーがお勧め。ハイヒールや革靴は芝を傷めるので厳禁です」。また、真夏のゴルフ会場は猛暑が予想されるため「帽子、サングラス、日焼け止めは必須。日傘もあった方がいいと思います」とアドバイスする。

◇体操=体操漫画「ガンバ! Fly high」の題名が物語るように、体操競技(新体操、トランポリン含む)の会場から聞こえてくる声援はすべて「ガンバ!」だ。丁寧に「れ」を付けて「頑張れ!」と声を出すと、恐らく浮いてしまうだろう。

 大技に入る前になるとファン、観客はもちろん、団体競技の味方選手は大声で「〇〇(選手名)、ガンバ!」と叫ぶ。起源は不明だが、日体大女子コーチの森末典子氏は「昭和50年代に現役でしたが、当時からありました。少なくとも私が高校生だったモントリオール五輪(1976年)の時から掛け声は『ガンバ!』でした」と証言。かなり歴史は古いようだ。

 また、森末氏は「海外で試合している時に『ガンバ!』って声を聞くと、日本人が来ているって思ってうれしくなる」と言う。東京五輪では男女ともに体操のメダルに期待がかかる。せっかくなのでテレビの前でも「ガンバ!」の声援を。

◇スポーツクライミング=東京五輪から正式競技となるスポーツクライミングにもユニークな応援方法がある。以前に本企画で紹介したが、同競技には選手の「母国語」で応援する慣例があるのだ。

 例えば日本人が登っていると外国人から「ガンバ!」の声援が飛び、米国人なら「カモン!」、フランス人なら「アレアレ!」、スペイン人なら「ベンガ!」といった具合だ。会場には国境を超えた一体感が生まれ、まさにスポーツの祭典にふさわしい光景となる。

 観戦前には辞書を片手に「頑張れ!」の外国語の勉強が必要だ。

◆写真&動画のSNS投稿厳禁=スマホでの気軽な撮影には要注意だ。各競技会場に設定される「撮影禁止区域」以外でも規制はある。チケット購入・利用規約の第33条には「会場内において写真、動画を撮影し、音声を録音することができる」と記されているが、これらは「IOC(国際オリンピック委員会)の事前の許可なくテレビ、ラジオ、インターネット、その他の電子的なメディアにおいて配信、配布することはできない」とある。ツイッター、インスタグラム、ユーチューブなどのSNS投稿は厳禁。一切の権利をIOCに移転し、その著作者人格権を行使しないことに同意しなければならない。近年は肖像権などを巡る問題が多発しているだけに、撮影に関しては細心の注意を払いたい。