大事故から帰国・桃田を守る鉄のカーテン 所属先が敷いた徹底サポート態勢

2020年01月16日 16時30分

眉間の縫い痕が痛々しい桃田

 遠征先のマレーシア・クアラルンプールで交通事故に巻き込まれ、全身打撲と顔面3か所の裂傷を負ったバドミントン男子の世界ランキング1位・桃田賢斗(25=NTT東日本)が、陣営の“愛のサポート”で立ち上がる。帰国(15日)後に病院へ向かい、改めて身体面の無事をチェック。それと並行し、前回の不祥事でも支えてくれた所属先のNTT東日本の徹底的な精神的ケアを受けながら、ゆっくりと復活ロードを歩む方針だ。

 運転手が死亡する大事故から2日。桃田は大勢の報道陣とファンが待ち構えた成田空港に帰国した。到着ゲートに姿を見せると、律義な男はきっちりと一礼。複数の関係者に「ありがとうございます」と言い、握手を交わすシーンもあった。黒の帽子にサングラス、大きなマスクを着用していたが、眉間には痛々しい傷跡がくっきり。それでも、しっかりとした足取りで、無言のまま病院へ向かった。

 バドミントン界の宝を何としても守る――そんな桃田陣営の熱き思いが表れたやりとりがあった。成田空港には日本バドミントン協会、所属先のNTT東日本、マネジメント会社が迎えに来ており、コメントを出すか否かを議論。一時はファンへ向けて桃田の言葉を発信する方向で進んだが、特に慎重だったNTT東日本が下した結論は「検査結果が出るまでコメントしない」だった。

 関係者はこう話す。「現地の病院の診断を疑うわけじゃないが、全身打撲をしているので改めて日本でちゃんと検査し、その結果を見ないと桃田の言葉は伝えられない」。現地の病院で出された診断書を持ち帰っており、今後は体の隅々まで検査。後遺症がないことをきっちり確認する方針だ。

 身体面だけではない。目の前にいた運転手が絶命しているだけに、25歳のメンタルを心配する声も多い。今後、車移動の際に事故を思い出すなどPTSD(心的外傷後ストレス障害)の懸念もある。だが、リオ五輪前に発覚した不祥事(賭博行為)で無期限謹慎処分を下された際に桃田を支え続けてきた所属先のNTT東日本は「心身ともにケアに努め、引き続き桃田選手をバックアップしていきます」と徹底的にサポートするつもりだ。

 桃田と同社はスポンサーではなく正社員の契約。不祥事の際はトレーニングの傍ら、会社内で一般業務もこなした。いつ試合に出られるか分からない状況でもクビにせず、支えてくれた同社に対し、桃田は日頃「周囲の支えに感謝」と話してきた。一番苦しい時期に芽生えた信頼感が、今まさに直面する精神的不安を拭おうとしている。

 検査結果が出た後は療養し、3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)で復帰を目指していく。同僚の一人は「なるべく人ごみを避け、リスクがある場所には行かない」と“鉄のカーテン”を予告する。トラブルが多い人生だけに、今夏の東京五輪で金メダルを獲得する瞬間まで、何があっても桃田を守り抜くつもりだ。