【バドミントン】桃田「五輪絶望」誤報の混乱 九死に一生の舞台裏

2020年01月14日 16時30分

 東京五輪まで200日を切る中、衝撃的なニュースが日本に飛び込んできた。金メダルに最も近い男と言われるバドミントン男子の世界ランキング1位・桃田賢斗(25=NTT東日本)がマレーシアの首都クアラルンプールで交通事故に巻き込まれた。桃田の命に別条はなかったが、運転手が死亡。事故当初は桃田の「五輪絶望」の誤情報も流れたほどだった。その原因は絶妙なタイミングで重なった2つのリリース。悲劇の裏舞台でいったい何が起こっていたのか。

「もう五輪はダメだ」。悲劇が日本に伝えられた直後、関係者は絶望した。第一報から日本バドミントン協会が事故状況を発表するまでの間、あるニセ情報が駆け巡ったことが原因だった。

 事故を振り返ろう。現地時間13日午前5時ごろ、マレーシア協会が手配したワゴン車は桃田をはじめ平山優コーチ(34=日本ユニシス)、森本哲史トレーナー、大会技術スタッフを乗せ、クアラルンプール空港へ向け高速道路を移動中に大型トラックに激突。車体の前方は大破し、運転手が死亡する凄惨な事故となった。桃田は2列目に乗車していたため九死に一生を得たが、もしも助手席に座っていたら…と想像するとゾッとする。

 日本に伝えられた第一報は午前11時前。当初は地元警察の発表として「桃田は鼻を骨折」と報道されたが、午後3時過ぎに日本バドミントン協会は「顎部、眉間部、唇の裂傷と全身打撲」と検査結果を発表。情報は修正されたが、状況が分からない日本滞在の関係者には「骨折」が独り歩き。それに連動してファンもSNSで大騒ぎし、一部では「半身不随」というガセネタも出回った。

 これは日本協会が出した1通のリリースが引き金だった。日本協会は同日正午過ぎにメディアへ「選手団派遣中に発生した事故に関するお知らせ」をアナウンスし、全く同じタイミングで桃田がインドネシア・マスターズ(14日開幕)をキャンセルしたと正式発表。その欠場理由が「下肢の炎症のため」だったことが混乱を招いた。桃田は事故に遭う前から欠場を決めており、この日は日本へ帰国するために空港に向かっていた途中。だが、事故と欠場のリリースが重なり、前述の「骨折」や「運転手死亡」と相まって「桃田は下半身に絶望的なケガを負った」との臆測が広まったというわけだ。

 桃田は事故前日に今年初戦のマレーシア・マスターズで優勝を飾ったばかり。東京五輪選考レースは独走中で、残り全試合を欠場したとしても出場は当確だ。リオ五輪直前の2016年4月には違法賭博問題が発覚。無期限試合出場停止処分を下された苦い経験がある。そこから這い上がり、二度と同じ轍を踏まぬよう注意を払っていたが、自分の力ではどうにもできない事故に見舞われてしまった。

 不幸中の幸いで身体的に後遺症が残るような大事には至らなかったが、死亡事故に直面したことで精神面への影響が出ないとは言い切れない。不祥事の際に桃田を支えてきたNTT東日本の関係者は「我々も気をもんでいる。何事もないことを祈るばかり」と切実に語る。絶対王者の一刻も早い回復が望まれている。