2020年夏、いよいよスポーツの祭典・東京五輪が開催される。プレ五輪イヤーの今年は大きな盛り上がりを見せるはずだったが、日本オリンピック委員会(JOC)のトップが五輪招致の不正疑惑で交代したり、国際オリンピック委員会(IOC)の決定でマラソン・競歩会場が札幌市に変更されたりと、ドタバタが続出。国会でも指摘していた不安が的中した“燃える闘魂”アントニオ猪木氏(76=前参議院議員)は何を思うのか。いろいろあった19年のスポーツ界を中心に“闘魂節”でぶった切った。

 ――ついに東京五輪開催が来年に迫った

 猪木氏:ケチをつけるつもりはないけど、最初に(7~8月開催の)日程が出たときに「この時期にやるバカがいるかよ」って、国会でも怒ったんですけど、結局ね…(苦笑い)。「選手ファースト」とか言ってるけど、選手が最高のパフォーマンスをできる気候かよって。裏に米国での放送権の問題とかあるのは分かるけど、結果的にグチャグチャになって、マラソンなんて最後は開催地が札幌に変わって。

 ――かねて気候の不安を指摘してきた

 猪木:選手もだけど、観客にとっても問題ですよ。熱中症にかかっちゃう。まあ、端的に言えば成功することを願っていますけどね。それから本来、五輪っていうのは参加することに意義があったんでね。今こそ、その基本にしっかり返る必要があると思いますよ。メダルをどこの国がいくつ取ったとか、俺は興味ないんで。本来の目的である平和につながる大会にならないと。それが(1984年)ロサンゼルス五輪から商業ベースに変わってしまった。昔はお金の問題があると「我々はプロではありません。アマチュア精神にのっとって」って言ってたけど、その精神ってどこに行っちゃったの?って感じですよ。

 ――五輪とお金の問題は近年、問題視されることも増えてきた

 猪木:今のスポーツにはお金がついて回るっていうのはあるんですけどね。合宿や練習にもお金がかかる。その辺、テコンドーの変なオジさんは、あれはあれで役割を果たした面もあったんじゃないかなって思います。

 ――全日本テコンドー協会前会長の金原昇氏(65)は強化方針などでトップ選手と対立し、大きな注目を集めた

 猪木:お金がない競技で(お金を集めて)ね。それに、怪しいオジさんがいたほうがいいじゃない。面白いから。優等生が並んでても一つも面白くないじゃないか。

 ――JOCのトップは金銭の不正疑惑で交代。新会長の山下泰裕氏(62=全日本柔道連盟会長)に期待することは

 猪木:彼にも、ハチャメチャに引っかき回してほしいですよ。あとは今、精神論を言う人がいなくなったからね。彼がいるのは礼に始まり礼に終わる世界だから、そこのところをもっと声高らかに訴えてもらいたい。選手に、使命感というものをしっかり意識させてほしい。メダルだけじゃないんだ、というところですよね。そういえば昔(プロレス参戦の)声をかけたことがありますよ。(山下氏の)おじいさんがプロレスファンで。当時はそういうアイデアを持ってくるブレーンがいっぱいいたんで。

 ――そ、そんなことが…。今年はW杯日本大会で初の8強入りを果たしたこともあり、ラグビー人気が爆発した

 猪木:森(喜朗)先生が一生懸命、頑張ったのかなあと思います。ただ、日本人の一番怖いのは熱しやすく冷めやすいというところでね。一番いい例が飲食の有名店ですよ。行列をつくったかと思えば、何か月もすると誰もいなくなってしまう。その点、猪木ファンはしっかりした層がいるのでね。フフフッ…。

 ――ラグビー人気が猪木人気のように定着するには

 猪木:継続できるかは、次の大会で好成績を収められるかどうかでしょうね。五輪の7人制でも好成績を残せれば。あとは女性が動けば人気が出るから。女性と五輪での結果が大事ですね。

 ――野球界では猪木さんと面識のあるイチロー氏(46)が引退した

 猪木:異質というか、いい意味で野球の常識を破ったと思います。昔、ロスで食事をしたけど、飛び抜けた個性を感じました。自分の主張をしっかり持っていて、それを崩さない。歴史に残るスーパーヒーローですよ。

 ――引退したイチロー氏の今後は

 猪木:政治に出たら面白いでしょうね。主張をしっかり持っているから、スポーツ庁長官とかいいと思うけどね。あそこまでいった影響力は誰かがプロデュースしてあげたらいいと思いますよ。

 ――2020年の日本に期待することは

 猪木:五輪が終わった後のひずみに悩まされないことを願いますね。国立競技場も、金がかかろうが何しようが最初の通り屋根つけて造っときゃ良かったと思います。コンサートとか、五輪後のイベント開催を考えれば…。今、反省しても仕方ないけど。

 ――最後に東スポ読者にメッセージを

 猪木:本当に一番大事なのは、何が本当かしっかり見極めるっていうこと。情報に流されるのは仕方ないけど、自分なりの視点で物を見分けることが大切です。ということで来年も、東スポ読者の皆さんにとって、いい年になることを祈っています。