強化方針などを巡って選手との対立が続く中、全日本テコンドー協会は10日、東京・目黒区の駒場体育館で東京五輪の日本代表2次選考会を実施した。

 この日は男子の58キロ級と68キロ級、女子の49キロ級と57キロ級のトーナメントが開催され、それぞれ上位2選手が来年2月の最終選考会に駒を進めた。前日(9日)には金原昇会長(65)が外部有識者の検証委員会からヒアリングを受け、改めて身の潔白を主張。騒動が収まらぬ中、東京五輪へ最後の望みをかける選手たちのし烈なバトルが繰り広げられ、会場は不穏なムードを吹き飛ばす熱気に包まれた。

 そんな中、この日は金原会長の息子・貴将氏(24)が来場。現在、協会内の強化スタッフという立場にも関わらず、ここ最近の騒動で疲労がたまったのか白熱の試合中にあおむけで居眠り。関係者からは「この騒動が起きている状況の中、あそこで寝るのはどうか?」と批判の声も上がった。

 会場を出る貴将氏にこの件をぶつけると「そうですか…。今日はプライベートで来ていたんです。仮に強化スタッフとして大会に参加していたり、所属の選手が戦っていたら絶対に寝ていません」と弁明。あくまで仕事ではなく、知人の応援に来ていたと説明した。

 また、かねてウワサされていた父による審判への圧力の問題について「それが事実だったら僕はテコンドーを辞めています。会長の息子っていうことで覚悟はしてましたが…。それに、点数が入らなかったり、負けたこともありましたから」と潔白を主張した。いわれのない疑惑に「僕を応援してくれる人もいますし、すごく悔しかった」と振り返った。

 一方、大会前から協会のずさんさも随所に出た。実は1週間前までは金原派の協会幹部が“無観客試合”を画策していたのだ。当時の大会要項には「一般観客不可」「取材NG」の文字が躍っており、理由は「会場が狭いため」。しかし、実際は金原派の幹部が“顔バレ”を嫌がったためだ。

 騒動の中で一般客に顔をさらすのを嫌い、東京五輪を夢みる家族すらもシャットアウトするやり方に、選手をサポートする企業などが猛反発。この日の盛り上がりを鑑みると、大会直前で一般客の観覧と取材がOKとなったことは大きい。