得をしたのは誰か?

 国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会最終日の1日正午、IOCのジョン・コーツ調整委員長(69)、組織委の森喜朗会長(82)、小池百合子知事(67)、橋本聖子五輪相(55)ら各団体・組織の主要幹部が勢揃い。2020年東京五輪マラソン・競歩会場の移転問題で正式に札幌開催が決まったが、冒頭、コーツ委員長は「会場変更の決定権はIOCにある」「経費は東京都に負担させない」など合意事項を伝えた。

 小池氏は「会場変更の権限はIOCにある」「法的に勝つ可能性は少ない」とした上で「IOCが下した決断を妨げないというのが都の決断。あえて言うなら『合意なき決定』」と強調。欧州連合(EU)離脱問題で揺れる英国の「合意なき離脱」をパクって心情を表したが…。

「小池さんにとっては悪くない流れじゃないかな」とは政界関係者。

 一連の騒動はIOCのトーマス・バッハ会長(65)と森会長が仕掛けたことで、小池氏に札幌移転の話が伝えられたころには外堀は埋められていた。

「小池さんもハナから負け戦であることは分かっていたが、黙って引き下がっては都民の心は得られない。視線の先にあるのは来年の都知事選。そこで今回は悲劇のヒロインを演じた」(同)

 小池氏の“勝ちパターン”は巨大権力に立ち向かう構図になった時だ。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「森さんに近い自民党の某議員は、札幌移転の話が出た時『これで小池さんに指導力がないことをアピールできる』と豪語していた。それがフタを開けたら、都民やアスリートもIOCの強引な手法を批判し、『さすがに小池さん、かわいそう』という機運になってしまった」と指摘する。

 一方で今回の協議ではカネの問題は先送りにされた。

「札幌への移転費用を東京が負わないことは約束されたが、じゃあどこが負担するの? バッハ会長から提案のあった『オリンピックセレブレーションマラソン』も、それを行えば300億円かけた遮熱道路の費用をIOCに請求できなくなるのではないか」(鈴木氏)

 まだまだ波乱含みだ。