涙の裏には――。28日のバドミントン「ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2019」(東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ)男子シングルス決勝で、世界ランキング1位の桃田賢斗(24=NTT東日本)が同7位ジョナタン・クリスティ(21=インドネシア)を2―0で撃破。2連覇を達成し、表彰式では感極まって涙した。男泣きの背景には3年前の不祥事があるが、そのみそぎとして吉本興業のお笑い芸人もビックリの“ノーギャラ活動”を現在も行っているという。


 表彰台の頂点に立ち、ファンから万雷の拍手を浴びた桃田は「2連覇できる自信はなかったんですけど、コートに入ってこんな多くの方に応援してもらって…」と言葉を詰まらせた。頬に伝った涙をタオルでぬぐい「すごい苦しかったんですけど、皆さんのおかげで踏ん張ることができました」と男泣きした。

 今、日本で最も金メダルに近いと言われる王者の戦術も光った。第2ゲーム、スマッシュで奪った10点目を起点に8連続得点。「相手が攻撃してくる姿勢が見えたので、ガツンと一発打とうかなと」。この一撃で相手は完全に意気消沈。東京五輪と同会場で行われたプレ大会で最高の結果を出した。「まだオリンピックのイメージは湧かない。準備も足りない」と言いつつも「コートもシャトルも感覚がすごくいい。また恩返しできたら」と1年後の金メダル獲得を宣言した。

 涙には深いワケがある。試合後、桃田は「苦しいときに『桃田、一本!』って声をかけてくれたり、応援が後押ししてくれた。泣くはずではなかったんですけど、ちょっと感情が入り過ぎて泣いちゃいました」と語り、何度も感謝の言葉を口にした。

 リオ五輪直前の2016年4月に違法賭博問題が発覚。無期限出場停止処分を下され、一時は世界ランキングから抹消された。17年5月に復帰後は世界282位から再スタートし、地道に這い上がって頂点にまで上り詰めた。

 復活ロードを歩む中でトイレのスリッパをきれいに並べたり、道に落ちているゴミを拾ったり、私生活でも人として「徳」を積むことを心がけた。その最たる行動が「ボランティア活動」だ。桃田をよく知る関係者はこう証言する。

「桃田選手は大会や練習をこなしながらイベントにも参加していますが、所属先のバドミントン教室はボランティアなんですよ。あの一件があったからだと思いますが、今でも続けています」

 桃田は6月からマネジメント会社「UDN SPORTS」に所属しているが、不祥事の際も支えてくれた所属先のNTT東日本によるバドミントン教室は今も無償。芸能界では吉本興業に所属するお笑い芸人の「闇営業」「ギャラ飲み」が世間を騒がせているだけに、東京五輪金メダル最右翼のアスリートが過密な大会の合間を縫って“ノーギャラ活動”を継続しているとは恐れ入る。何よりスポーツ界を揺るがした賭博問題のみそぎとしては最高の形だろう。