17歳のスケボー世界女王・四十住さくら 20年の大舞台へ破産も覚悟・一家の熱血“金ドラ”

2019年04月20日 11時00分

世界選手権(左)とアジア大会の金メダルを披露する四十住

【「令和」に刻む東京五輪 気になる人をインタビュー】2020年東京五輪で「気になる人」にスポットを当てた連載「『令和』に刻む東京五輪」第2弾では、新種目スケートボードからニューヒロインが登場だ。昨年、同競技の「パーク」で初代世界女王に輝いた四十住さくら(よそずみ・さくら=17)は、金メダル候補筆頭として母国五輪出場を狙う。小学6年でスケボーに目覚めて以来、日本一を目指して母子で歩んできた。人生のすべてをスケボーにささげ、夢を追いかける親子の壮絶なドラマをお届けしよう。

 和歌山・岩出市の緑に囲まれた自宅の庭に特設のスケボーコースがある。日本一を目指して毎日練習する娘のため、両親は総額約180万円をかけて建設。現在、高校3年生の四十住は学校が終わると母・清美さん(54)の車で県外の施設へ出向く。母の手作り弁当を食べ、夜10時すぎまで猛練習。帰りの車で就寝し、深夜1時に帰宅する。この生活をほぼ毎日続けている。親子揃ってスケボーだけの生活、いや人生だ。

 四十住:とにかく滑るのが気持ち良くて大好き。楽しいことをやっているので、練習がつらいとも思わない。たまに友達に遊びに誘われるけど、私にはスケボー以外の遊びはない。

 清美さん:お金も時間もかかるけど、すべては本人の夢のため。彼女が戦っている姿を見ると、こっちも中途半端にはなれない。すべてをかけてやり切れば、結果が出なくても最後に「満足」が残ると思う。だから不安はないです。

 四十住がスケボーに出会ったのは小学6年生の時。兄・麗以八さん(30)の影響で始め、12歳の誕生日に初めてマイボードを買ってもらった。次第に夢中になり、中学入学時には遊びの域を超え始めた。中学には当然スケボー部はなく、本格的に取り組むには両親が練習場に付き添わないといけない。父の和次さん(52)は渋った。そこでスケボーを辞めさせようと、“超スパルタ”の練習メニューを作成。これを毎日こなすことを条件にしたのだ。

 清美さん:完全に意地悪なメニュー。絶対に音を上げるだろうって思ったんですが、なんと全部やりよったんですよ(笑い)。じゃあ、やるからには「日本一」を目指そうって約束したんです。

 四十住:あのメニューで逆に私にスイッチが入ったみたい。むしろ技の成功率が上がって、さらに楽しくなりました。親の考えを超えちゃいましたね。

 日本一を旗印に四十住家の挑戦がスタート。本格的コースを求めて遠征し、海外の大会にも自腹で出場した。ホテル代を節約するため車内宿泊は日常茶飯事。車の年間走行距離は約5万キロ、ガソリン代と高速代は月17万円になることも。ある時、清美さんは麗以八さんに「さくらの夢がかなうか、うちが破産するか、どっちかに賭けてもいいか」と聞いた。兄の答えは「いいんちゃうか」。住宅ローン返済のための貯蓄や学資保険を取り崩し遠征費に充て、父の和次さんは借金まで覚悟したという。いよいよ家計が限界となり「これが最後!」と言って出場した2017年11月の大会で3位に入り、賞金38万円を獲得。土俵際で首がつながった。

 清美さん:そんな時、地元の輸入時計店の方が「五輪を目指す子供に協力したい」と海外の渡航費などをサポートしてくれることになりました。本当にありがたい話ですね。

 さまざまな人に支えられ、18年5月の日本選手権で初代女王(パーク)に輝き、念願の日本一を達成。さらに同年8月、ジャカルタ・アジア大会でも優勝、極め付きは同年11月の第1回世界選手権(中国・南京)だ。練習でも一度も試したことのない大技をいちかばちか、本番で出して見事に成功させ、初代世界女王となった。親子で誓った目標を大きく超える世界一に。もちろん、夢の続きは「東京」にある。

 四十住:スケボーを始めたときは五輪ってピンとこなかった。まだ東京五輪の想像はできないけど、出るなら金メダルを取りたい。人生でうれし泣きはしたことないけど、もし金メダルを取ったら、たぶん涙が出ると思う。

 20年夏――。たとえどんな結果になろうとも、やり切った家族の笑顔は、メダル以上に光り輝いているだろう。

【スケボーは2種目】東京五輪で新たに正式競技となったスケートボードにはストリート、パークの2種目がある。出場選手は男女各20人、1か国最大3人。今年秋に開催される世界選手権の上位3人は当確、その他は世界各国で開催される公認大会で加算される五輪ポイントで決まる。

 パークで出場する四十住はすでに海外実績も豊富で代表選出が有力。また、ソチ&平昌五輪スノーボード男子ハーフパイプ銀メダルの平野歩夢(20=木下グループ)がスケボー・パークでの東京五輪出場を狙っており、日本選手5人目の“夏冬出場”なるかで注目を集めている。

☆よそずみ・さくら 2002年3月15日生まれ。和歌山・岩出市出身。兄の影響でスケボーを始める。中学入学後に母と二人三脚で本格的に練習に取り組む。県立伊都中央高に進学。18年5月の日本選手権、8月のアジア大会、11月の世界選手権を制し、日本、アジア、世界のすべてで「初代女王」となる。好きな食べ物はチョコレート。家族は父、母、兄。159センチ、52キロ。