2020年東京五輪出場の現実味は――。スノーボード男子ハーフパイプで14年ソチ、18年平昌五輪銀メダリストの平野歩夢(20=木下グループ)が、東京五輪で初採用されるスケートボードのパークで代表入りを狙っている。16日の日本オープン・パーク大会ではいきなり3位と健闘したが、日本選手の“夏冬出場”は過去に4人しかいないレアケースだ。本当に五輪出場は可能なのか? 平野本人や周囲を探った。

 平野の挑戦は開幕まで500日を切った段階で始まった。スノーボードの実力は誰もが知るところだが、スケートボードになれば話は別…と思いきや“初陣”となった16日の日本オープンでいきなり3位に入る好成績。本人も「まさか3位になれるとは思っていなかった」とビックリした様子で振り返った。

 スケートボードは幼少期から経験があり、かつてはコンテストにも出場したが、現在は「スノーボードのオフトレでやる程度だったり、遊び感覚だった」。10年以上のブランクがあったうえに、今大会に照準を合わせながらも右手の骨折で準備がままならず、不安は少なくなかった。それでも、デビュー戦で結果を残し「これからどうしていくか考えられないけど、五輪に近づくきっかけになればいい」を手応えを感じている。とはいえ、日本選手の“夏冬出場”は過去にスピードスケートと自転車で出場した橋本聖子ら4人のみで、かなりのレアケース。平野も「時間が少ない中でのチャンレンジ」と話しており、容易な試みではないことは十分理解している。技術的にも「まだまだ。海外のレベルは何倍も上の人たちがいる」と認め、険しい道のりとなることは間違いない。

 では、五輪出場のチャンスはないのか。日本ローラースポーツ連盟関係者は「パーク」という種目に着目して「チャンスはある」と本紙に明言した。スケートボードの「ストリート」は堀米雄斗(20=XFLAG)、池田大亮(18=ムラサキスポーツ)がすでに強化候補選手の条件を満たしており、五輪出場が濃厚。一方でパークに関しては笹岡健介(20)が昨年のアジア大会で金メダルを獲得したものの、強化候補の条件を満たす選手はW出場を視野に入れる池田以外は不在の状態だ。

 パークの五輪出場枠は「3」で「男子のパークは海外のレベルに追いついていない部分もあるが、逆にチャンスということ。歩夢もこの大会(日本オープン)にすべてをかけて準備してきたわけではないし、五輪に向けて練習をすれば十分可能性はある。それにスノーボードと違うと言っても、使う筋肉だったり共通する部分もある」(連盟関係者)。

 日本代表の西川隆監督(53)も「縦の動きはうまい。横の速さをプラスアルファで磨けば、誰にも負けない世界のトップのレベルに行けるのでは。難度が上がれば無敵になると思うし(時間は)十分あると思う」と期待は大きい。

 そうした中で冷静な意見もある。平野の父で日本スケートボーディング連盟の副代表理事を務める英功氏だ。「ハッピーエンドじゃないものを覚悟して臨んだ大会だったが、次のステップが踏めると思ったんじゃないか」と目を細めつつ、五輪については「本人がどう感じたか分からないけど、まずは第一歩ということ」と慎重なコメントだった。5月の日本選手権(新潟・村上市)の結果次第では五輪出場の可能性も見えてくるだけに、平野は「ケガのリスクも考えて地道な練習をやっていく」と意気込む。五輪銀メダリストの二刀流が無謀な挑戦でないことだけは確かだろう。

【パークとストリート違い】東京五輪のスケートボードは、男女別に「パーク」と「ストリート」の2種目が行われる。「パーク」は、斜面が設置された複雑な形をしたくぼ地状のコースを滑走し、スピードやジャンプ、回転技を競う。空中を舞うダイナミックなトリック(技)が見どころだ。

「ストリート」は街中にあるような階段や手すり、縁石や壁、坂道を模したセクション(構造物)を配置したコースを使用。障害物を飛び越える際にトリックを繰り出していく。

 どちらも採点競技で、いかに難度の高いトリックを正確に繰り出せるかが高得点への近道となる。