東京五輪 史上初の「エコメダル」大作戦

2019年03月13日 11時00分

河崎麻衣子さん

【東スポ2020現場最前線】今回は“五輪史上初”となる夢のプロジェクトを紹介する。東京2020組織委員会は2017年4月から「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」と題した計画をスタート。使用済みの携帯電話や不用になった小型家電を全国から集め、それをメダルにしてしまおう…というエコで画期的な試みだ。回収受け付けは今月末まで。大詰めを迎えたメダル作製の現状をリポートする。

 日本が世界に誇れるのは「発想力」。まさに、それを物語るプロジェクトだろう。

 事の発端は三菱総合研究所理事長の小宮山宏委員長、環境ジャーナリストの崎田裕子委員ら有識者による「小型家電をリサイクルし、回収金属でメダルを作ろう」という提案だ。この呼び掛けで「都市鉱山――」は2017年に発足した。

 かねて小宮山氏が提唱してきた「都市鉱山」という概念がプロジェクトの根底にある。資源がない日本が持続可能な社会で何を目指すか? その問いの答えが「不用なものから、鉱山に匹敵する価値を見いだす」という考え。ゴミではなく資源――。この発想の転換を東京大会を通して広めるという狙いがあるのだ。

 17年4月に回収がスタート。プロジェクト創設時から担当する東京2020組織委員会の国際局国際渉外部要人・プロトコール課の河崎麻衣子さん(33)は「そもそも必要な金属量はどのくらいか? 本当にリサイクル金属が使えるのか? デザインはどうするか? 何も分からない中で始めたので大変でした」と立ち上げ当初を振り返る。過去の五輪でメダルの一部にリサイクル金属が使われた例はあったが「メダル製作を目的に小型家電を回収する取り組み」は五輪史上初。それだけにすべてが手探りだったという。

 同委員会は著名人やアスリートに呼び掛けてイベントを行うなど、内外で普及活動に努めた。徐々に浸透していき、現在では全国47都道府県、全体の約9割にあたる1594自治体が参加。これまでに集められた金・銀・銅は別表の通りで、銅は昨年6月末までの回収量で100%を達成し、金、銀もほぼ目標数を達成する勢いだ。

 環境問題は地球規模のテーマだけに当初から海外メディアの反応は好意的で、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(65)も「このメダルは世界に向けて強いメッセージを届けることになる」と絶賛。

 また、河崎さんは「リサイクルのメダルをもらうのはどうなのか?」と選手サイドの思惑を懸念していたが、フタを開けてみると「みんなの思いが詰まっていていいねっていう反応をもらいました」と不安は杞憂に終わった。実際、五輪体操個人総合2連覇の内村航平(30=リンガーハット)は「これまで利用してきた(家電の)価値や思いをメダルに込めるわけですし、将来に大切なメッセージを伝えるプロジェクトになると思う」と喜んでいる。

 では、実際の回収状況はどうか。河崎さんによると「ガラケーが最も多いように感じる」とのこと。その数は500万台以上で、回収全体では約5万トンに迫る。他にも回収できる家電はプリンター、カーナビ、炊飯器、加湿器、リモコンなど合計28品あり(※同委員会HP参照)、中には電子レンジを担いで来た学生もいたという。

「私も家にたまっていたガラケー4台、あと古すぎて処分できなかったウィンドウズ95のブラウン管パソコンを提供しました」(河崎さん)

 回収された小型家電は分解・選別され、精錬事業者によって金・銀・銅を抽出。最終的に約5000個のメダルに生まれ変わる。

 1964年の東京大会は高度経済成長の象徴だったが、今回は「皆さんの一つの行動がオリンピック・パラリンピックにつながる」という国民参加型の大会。このプロジェクトが世界的に評価されれば、24年パリ大会、その後につながる可能性は十分ある。

 回収受け付けは31日まで。人生に何度も経験できない自国開催の世紀の祭典に、ぜひ参加してみては?

【20年大会のデザインは.今夏決定】東京大会は国際的に「国民参加型」と言われるが、その理由に「デザイン募集」もある。

 同委員会はデザインを専攻する学生およびデザインに関する職歴を有し、立体造形物の制作および発表実績のある者を対象に金・銀・銅メダルのデザインを募集(受け付けは終了)。金属造形が専門の宮田亮平氏を座長とした13人の審査会による厳正な審査の末、421人のエントリーの中から五輪・パラリンピック各1作品が決定。今年の夏に発表される予定だ。

 これにも苦労話は尽きない。過去に五輪エンブレムの“盗用疑惑”などが浮上したが、デザインがオリジナルかどうか?の判定には慎重にならざるを得ない。「選ぶ過程で法務の方にチェックしてもらい、手書きのスケッチから実際に出来上がる過程を説明し、見てもらいました」(河崎さん)と念入りだ。

 また、メダルはすでに造幣局で製造中。近年よくあるSNSによる公表前の“流出”も心配されるが、これについても同委員会は「製造に関わる方には誓約書を書いてもらっています。家族にも伝えないようお願いをしています」。この徹底ぶりには頭が下がる。