中日の黄金ルーキー・根尾をスキーで倒した男「MTBで五輪狙う」

2019年03月06日 11時00分

降りしきる雪の中、マウンテンバイクにまたがる北林(長野・白馬の岳友荘前で)

【気になるあの人を追跡調査!野球探偵の備忘録(特別編)】昨秋ドラフトで4球団競合の末、中日に入団した根尾昂内野手(18=大阪桐蔭)は右ふくらはぎ肉離れが完治し、早ければ12日の教育リーグ・ソフトバンク戦(ナゴヤ)で実戦デビューする。その根尾とかつて雪上で競い合った男は今、自転車競技で世界を股にかけた挑戦を続けている。今回だけ本紙・野球探偵記者は“スキー探偵”と化し、スキー、マウンテンバイク、イケメンの三刀流男・北林力の素顔に迫った。

「野球をしてるというのは聞いてたけど、そんなにすごい選手だとは知らなかった。自分もマウンテンバイクをやってるとは言わなかったんです。いきなりテレビに出てきて、ビックリしましたよ」

 信州は白馬。雪深い白馬三山のふもとで生まれ育った北林は、スキーヤーの母、ニュージーランド人で自転車乗りの父の影響もあり、幼いころからスキーとマウンテンバイクの世界にのめり込んだ。夏は山々をバイクでめぐり、冬は白銀の世界を滑走。競技の世界でも徐々に頭角を現し、中学3年の冬、全中スキー大会の決勝で根尾と出会う。

「僕が3年生で、根尾君が2年生のとき。1日目が回転競技で、根尾君のほうがちょっとだけ(タイムが)前だった。悔しかったですね。次は負けないぞと」

 回転競技では根尾に次ぐ2位も、翌日の大回転競技では優勝でリベンジを果たす。全中大会で揃って好成績を収め、イタリアで開催された世界大会では相部屋で1週間をともにした。

「『トッポリーノ』っていう、イタリア語で『ミッキーマウス』という意味の一番デカい大会。根尾君は本当に真面目だなという印象で、ずっとイヤホンをつけて本を読んだり、英語でスピーチもしてましたね。それでもパレードではおどけて踊ったり。意外とギャップがあるんだなって」

 その後、根尾はスキーを引退し、大阪桐蔭で野球一筋の生活に。北林も高校卒業まで二刀流を続けたが、全日本MTB選手権4連覇を機に昨シーズン限りでストックを置いた。

「中学までは夏と冬の五輪両方でメダルを取りたいと本気で考えてました(笑い)。ただ、上に行くとどっちも中途半端な部分が出てきちゃって。両方好きだけど、自転車のほうが自分にはチャンスがあるのかなって」

 今はレーシングチーム「ドリームシーカー」に所属。日本人トップの実績を持つ山本幸平とともに、世界中のレースに参加している。

「ドリームシーカーを選んだのは海外のレースが中心だったから。マウンテンバイクって日本と海外ではまるで違う競技なんです。日本だと抜かすときに道を開けたり、譲り合ったりするんですが、海外ではドーピング以外何でもあり(笑い)。幅寄せしたりぶつかったりとやりたい放題のなかで、山で一番速いやつを決める。体格もゴリゴリの人もいれば、小柄で登りに強いタイプもいて、単なる速さよりもテクニックを駆使してどれだけ自分の走りができるかを競う。結構、戦略的なスポーツなんですよ」

 見据えるのは来年に迫った東京五輪と、その先のパリ五輪、そしてワールドカップの頂点だ。

「もちろん東京五輪も意識してますが、枠の関係もあって今の僕が選ばれるのは難しい。キャリアハイという意味でも、本当の勝負はその次のパリだと思ってます。最終的にはワールドカップで日本人として、最前線の8人の列で戦える選手になること。野球と違ってどうしてもメディアに取り上げられる機会は少ないですが、自分も負けてられないなと。出会ったのはスキーでしたが、野球と自転車、それぞれの世界で切磋琢磨していきたい」

 マウンテンバイクにまたがった“白馬の貴公子”は、かつてのライバルを刺激に己が頂を登る。

☆きたばやし・りき=1999年11月26日生まれ、長野県出身。3歳からスキー、自転車を始める。スキーでは白馬中3年のとき、全中大会アルペン大回転競技で優勝、同回転競技で準優勝。白馬高3年のとき、インターハイ大回転競技で全国8位。自転車競技では中学3年から高校3年まで全日本MTB選手権クロスカントリーで4連覇。高校卒業後はレーシングチーム「ドリームシーカー」に所属。今年行われたMTB世界選手権では86位。179センチ、77キロ。