日本一ジャンパーの素顔は――。陸上男子走り高跳び日本記録保持者の戸辺直人(26=つくばツインピークス)が27日、東京都内の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で練習を公開。最高2メートル20の跳躍を披露し「この気温(8度)で跳べたのは僕の中では上々かなと思う」と手応えを語った。

 2日にドイツで行われた室内大会で2メートル35を記録。13年ぶりに日本記録を塗り替えたが、直前まで体よりも頭をフル回転させていたという。1月末まで籍を置いた筑波大大学院生として博士号論文の最終審査を受けており「そっち(論文)でかなり追い込んでいたので競技のことは考えていなかった」。それでも「審査が終わった解放感で遠征に向かった。この状況でどれだけできるか確認の意味が強かったが、気づいたら日本新記録が出た」と明かした。

 大学院への進学を決めたのは大学4年で「本当に世界のトップに行くためには何が必要か考えた時に今のままではダメだと。『研究』みたいなものが必要だと思った」。ただ競技と研究の“二刀流”は容易ではなく「研究はかなり時間を使うし、ずっとデスクワークをしていたら競技にも支障が出てしまうので、バランスを取るのが難しかった」と振り返る。

 そんな中で手にした博士号と日本新記録。4月にはJALに入社する。これまでは練習でビデオ撮影に加え、踏み切る足の角度や速度の詳細を記録する一方、本番は「自分一人という環境では感覚をもとに技術を修正する能力が大事になる」と、“データ”と“直感”を重視する。

 今後の目標は「記録では2メートル40を目指して、世界選手権では金メダルを取りたい」。さらに「競技者の集大成として迎えたい」と来年の東京五輪を見据えた異色のジャンパーに注目が集まる。