元気がなければあの世にも…!? “燃える闘魂”アントニオ猪木氏(75=参議院議員)が本紙の新春インタビューに応じ、激動の2018年を総括した。大相撲で勃発した元貴乃花親方の花田光司氏(46)が関わる一連の騒動や、スポーツ界を揺るがした不祥事連発に北朝鮮問題、ライバル・マサ斎藤さん(享年75)の訃報――。さまざまな18年の出来事をぶった斬ると、自身の健康状態や「死」についても“アントン節”が炸裂した。

【貴乃花騒動】元貴乃花親方の花田光司氏は2月の日本相撲協会の理事候補選で落選。弟子の暴力行為をめぐる対応などで相撲協会と対立を深め、10月1日付で協会を退職。11月には景子夫人と離婚したことを公表した。

 俺も彼に近いことをプロレス界でやってたんでね。一つ言えるのは、彼は純粋なんだと思いますよ。純粋に改革しようと思ったんじゃないですかね。ただ、相撲協会っていうのはそうはいかないというか。俺も一匹狼だったから気持ちは分からないでもないんだけど、数がないとどうにもならないですよ。もう少し「策」が必要だったんじゃないかな。みんなそれぞれ損得勘定あるんで、計算通りにいかないこともあるんだから。

 今後は政治家になるのがいいかって? 参議院であれば面白いとは思うけど…。それよりも今、相撲がインターナショナルになっているんでね。それなのに“国技”という形で箱詰めにされている。本当のインターナショナルはもっと自由であるべきですよ。そうなると、相撲の国際連盟でもつくったらどうか。「世界“相撲”連合」ってね。ムッフッフ…。先立つものは…まあ、まだ若いんだし、なんとかして。例えば「外国人力士は1部屋に1人」っていう枠があるけど、そういうのをなくせばいいんですよ。時代が変わっていく中で、その辺の発想を持ったら面白いんじゃないかと、俺は思うよ。

 そういえば昔、彼のお父さん(大関初代貴ノ花の故花田満さん)をプロレスに誘ったことがあるんですよ。1回か2回会ってます。ちょっと話したんですけどね、フフフッ。

【マサ斎藤さん死去】名レスラーの“獄門鬼”マサ斎藤さんが7月14日に死去。猪木氏とは1987年10月に巌流島でプロレス史上に残る死闘を繰り広げた。

 パーキンソン病になって、何年か前のパーティーで久しぶりに会いましたよ。なつかしくて肩を抱いたけど、なんの反応もなくてね。それで覚悟はしていました。マサとの縁はいろいろあってね、巌流島でも戦って。お疲れさま、ご苦労さんでした、と。いい相手を持てたということは俺にとっても良かった。彼は人が良かったもんねえ…。

 みんな、人が亡くなった時に「惜しい人をなくした」とか言うけど、俺はあまり使いたくないんですよ。最近思っているのは「おくられびと」という考え方でね。「死」というだけでどうしてもマイナスイメージになってしまう。でもいずれ誰にでも来るじゃんって。

 そういう時に俺が世の中に送りたい言葉なんですけど「元気がなけりゃ、あの世にも旅立てない!」っていう。高齢化って言うけども、100歳になったらどうするんだよって。100歳になったはいいけども、それで子供や孫に介護されて世話にならなくちゃいけなくなったらね…。それならば高齢でももっと健康で、元気で、社会に何か役割を果たせるというのが理想であってね。

 自分なりに自分と戦って、その中で最期まで目的を何か持たないと、何も意味がないんですよ。こんなこというと怒られちゃうかもしれないけど、戦時中にうちの兄貴は特攻隊で死んだんです。

 今の価値観で見れば「なんで、そんなバカなことを」となる。でも本人になり代わり、一つの目的を持って死んだというのはある意味で意義があったのかなって思ったりもする。76歳にもうすぐなるけど、そういうことや、今までの人生、リングの上のことやブラジルからの移民時代を含め「社会にいいメッセージを送れればいいなあ」と考えているところです。

【パワハラ】レスリング五輪4連覇の伊調馨が栄和人氏から受けたパワハラ騒動、日大アメフット部の悪質タックル問題、日本ボクシング連盟の山根明前会長の不正疑惑、体操の宮川紗江が塚原夫妻をパワハラ告発などスポーツのあり方が問われた。

 時代がそうなったんじゃないかっていうことですよ。今まで当たり前で通っていたものが「パワハラ」とか言われるようになった。今は時代の変わり目ですから。今まで当たり前だったことが当たり前じゃなくなってきている。俺たちはそういう時代の“つなぎ目”ですよ。

 あと「権力とは何なのか」についてもしっかり考えないといけないタイミングに来ているんでしょうね。カルロス・ゴーンもそうだけど。「クリスマス前に除夜の鐘がゴーンと鳴った」ってね。政治にも言えるけど、権力を持つと、なぜか人は変わってしまうんでね。俺にもプロレス社会でそういう時代があった。でも自分なりに言わしてもらえば理念がありましたよ。権力には理念が必要なんじゃないかな。

 あとは逆に言えば、そういう権力者を周りがつくってしまったっていうのもあるでしょうね。暴走する権力に対して「それは違うぞ」と言える気風を育てていかないといけないですよ。

【北朝鮮問題】北朝鮮の核開発をめぐり国際社会の緊張が高まる中、6月12日に米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が史上初の米朝首脳会談を開催。猪木氏は9月に訪朝した。

 今年の北の金正恩委員長にはいろんな見方があると思います。一つ言えるのは今後は南北が融和していかなきゃ、南も苦しいし、北は北でね。そうなると一番の策は南北融和で。北は鉱物資源があって、南は農産物がある。そこが分断されているのでね。

 訪朝時の車イス? 要は神経のどっかがアレで、足の親指が返らないんだよ。そうするとちょっとした段差でつんのめっちゃう。それで「腰の手術をすれば、神経が戻ってくるかもしれない」というので手術を受けたんです。あの時はその直後でしたね。

 でもね。“経験に勝るものなし”というか。体験して分かったことがあって良かった。例えば腰の手術をして入院した時、トイレでウォシュレットのボタンがすごく後ろの位置にある。健康な人は気にならないけど、体をひねれない人間は使えないんですよ。おかげでそういう“気づき”をすることが山ほどできた。世の中、バリアフリーっていうけど、まだまだそこまでいってないってね。そういうことにも経験者として取り組みたいですよ。

【2019年への提言】日本という国をもう一回、しっかり見直して政治制度を変えていかないと。権力者にこびを売らないと(議員)バッジもハメられないというのを変えて、もっと自由な志を持った人が出てこられる環境づくりをしないといけないでしょうね。昔はもっと男を張る政治家がいましたよ。今は上ばかり見て、出世ばかり考えている。仕方ないかもしれないけど、少しでも志を持ってもらいたいなあ、と思いますよ。