宮川紗江 無罪の塚原夫妻との“全面対決回避”の真意

2018年12月13日 11時00分

宮川(手前)と山口弁護士

 勇気ある撤退なのか。体操のリオ五輪代表、宮川紗江(19=高須クリニック)からパワハラを告発された日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長(71)と塚原光男副会長(70)が第三者委員会から「パワハラではない」と認定されたことを受け、宮川の代理人を務める山口政貴弁護士(43)は11日、本紙の取材に対して「行動を起こすつもりはない」と明言した。意外な“全面対決回避”により、スポーツ界を揺るがした大騒動は、あっけなく収束しそうだ。

 塚原夫妻は「不適切な行為」「パワハラに準ずる行為」が認められながら、パワハラ認定されず“無罪放免”になった。職務一時停止が解かれて復帰の道へ向かう中で、内外から「処分なしは甘すぎる」との厳しい意見も飛び交っている。

 告発を無にされた宮川サイドは、どんな反撃に出るのか? 世間の注目が集まったが、下した判断は意外にも「もう動かない」だった。「敗北宣言」とも受け取れるが、実際はその逆だという。この日、宮川の父親と話し合いを持った山口氏は、騒動からの“撤退”に至った理由をこう説明した。

「こういう判断をした根拠の一つは、宮川選手が、もう吹っ切れているということ。今回の発表で精神的に落ち込んだり、マイナスになっていない。すでに練習しているし、そういう状況で、あえて外野が動く必要性があるか? いまさら協会を批判したり、第三者委員会の判断を覆す行動に出るのは得策ではないという話でまとまりました」

“女帝”と称されるほどの巨大な権力に真っ向から挑んだが、塚原夫妻は「おとがめなし」と判断された。このことで窮地に陥ると思いきや、宮川は煮え切らない怒りをプラスに転換し「本人は、もう東京オリンピックの金メダルに向かっている」(山口氏)。もちろん「弁護士としては納得がいかない部分もある」が、いたずらに騒動を長引かせるよりも“負けるが勝ち”の道を選択したという。

 大目標の2020年東京五輪まで残り2年を切っている。これ以上、「パワハラ騒動」にとらわれている状況ではない。宮川はパワハラ告発により先月の世界選手権(カタール・ドーハ)の代表候補を辞退したが、メダルを期待された女子団体で日本は6位に終わった。これには、ポイントゲッターの宮川が抜けたことが影響したという見方も出ていた。

 宮川サイドには、10代の女子がハッキリと自己主張したことで「あまりやり過ぎると、こうなるぞ」と、旧態依然の体質に一石を投じたという自負もある。バルセロナ五輪メダリストの池谷幸雄氏(48)が「私のところに複数名の体操関係者から、驚がくの結論に、がくぜんとする感想のLINEやメール、電話がリアルタイムでありました」とコメントしたように、波紋が広がったことで体操界の内実が表面化したことは確かだろう。

 塚原夫妻から宮川サイドへの謝罪は11日現在で一切ないという。しかし「もう謝罪の必要性もないですし、そこも問題視していません」(山口氏)。宮川サイドは“アスリートファースト”の姿勢を優先したようだが、肝心なのは、この騒動を受けて体操界がどう変わっていくかということ。東京五輪に向けて、ここからが本当の正念場と言えそうだ。