【東スポ2020現場最前線】2020年東京パラリンピックは8月25日に開幕する。本番まで2年を切り、障がい者スポーツも盛り上がりを見せてきているが、競技の理解を深めるには、器具を抜きにしてはありえない。そこで今回は最新鋭の器具を大特集。ピックアップしたのは車いす、義足、ブラインドサッカー(視覚障がい者5人制サッカー)ボールの3つだ。各メーカーに強みや工夫を取材すると、そこには職人たちの「ものづくり」の精神があふれていた――。

 アイマスクを着用し、視覚を閉じた状態で音や声を頼りにボールを蹴るブラインドサッカー。そのボールを製造する国内唯一のメーカーが「sfida」ブランドを有する株式会社イミオだ。きっかけは2010年、日本ブラインドサッカー協会からの依頼だった。当時、日本で使用していたボールは外国製。注文の手間や輸入コスト、品質に課題があり、国内ブランドへの切り替えを模索していた。イミオは通常のサッカーボールの製造を手がけており、製造ノウハウがあった。

 8年間で数回の改良を重ねた。こだわったのは「音が大事、音が命」(倉林啓士郎社長)。ブラインドサッカーのボールは振るとシャカシャカと音がする。視覚障がいを持つ選手はこの音を頼りにプレーする。ボールの表面に埋め込んだ4センチほどの金属製ディスク内に鉛の球が入っており、ボールが動くたびに音が発生する仕組みだ。

 会場には観客がいる。音量が小さかったり低音ではいけない。鉛ではなく木材を入れたり、ディスクの個数や配置について何度もテストした。試行錯誤の末、しっかりと選手の耳に届く極上の音にたどり着いた。「sfida」は国際大会で使用される外国製ボールと比較しても「音に関してはウチのほうがいいと言ってもらえている」(同)と高い評価を得ている。デザインや耐久性も進化し、国内では安定したボールの供給を実現。業界全体の成長を足元から支えている。