日本体操協会の塚原光男副会長(70)が11日、日本テレビ系の情報番組「スッキリ」に生出演し、来年6月をもって妻の千恵子女子強化本部長(71)とともに退任する意向を示した。リオ五輪女子代表の宮川紗江(19)に対するパワハラ問題の解決をみる前に進退を表明した形だが、これですべてが“スッキリ”というわけにはいかない。協会には強い影響力を残したままで「腹心問題」など課題は山積している。

 パワハラ騒動後、初めて生放送に出演した塚原副会長は「来年6月の任期切れをもって協会から退く」と明言し、千恵子氏についても「来年6月に退く」と言い切った。前日には協会から騒動を招いたとして職務一時停止を通告された。宮川が告発したパワハラ問題が新展開を迎えた矢先の決断だった。

 このままなら千恵子氏は2020年東京五輪で指揮を執ることはない。ただ、塚原副会長はこれまで「全部ウソ」と言いつつ謝罪するなど、数々の二転三転で世間を混乱させてきた。9か月も先のことなどどこまで信用していいものなのか。第三者委員会の調査結果によっても流動的な部分は残る。

 何より、仮に協会から塚原夫妻がいなくなっても“塚原色”は消えない。塚原夫妻の存在感の前には隠れているものの、随所でクローズアップされているのが“付け人”の暗躍だ。

 宮川は、千恵子氏の付け人から「朝日生命の寮が一つ空いているからそこを使ってもいいのよ」の言葉とともに、専任コーチの電話番号を渡されたと語った。速見佑斗コーチ(34)は昨年の世界選手権で試合前にもかかわらず「2020(東京五輪特別強化)に入って朝日生命にも入ってやればすごくよくしてくれるのよ」と声がけされたことを明かしている。どちらも引き抜きの証拠として公にされたものだ。

「付け人」と名はつくとはいえ、千恵子氏の意向を伝える“汚れ役”をこなすと同時に強化にも携わり、協会内部にも精通。ネット上では「ハンパない権力…」との声が上がるほどの人物だ。

 もちろん、こうした腹心も第三者委の調査対象になることは必至。一方で、協会内に塚原サイドとつながりの深い関係者がどれだけいるのかは不明だ。今後も会場や代表合宿で隙あらば千恵子氏の“遠隔操作”を受けて活動するのであれば、選手としてはたまったものではないだろう。これらの問題をどうするのか、協会の責任も問われている。

 塚原副会長は「過熱報道を沈静化させたい」と生出演した理由を繰り返した。ただ、パワハラ問題が決着しても具志堅幸司副会長(61)の言う「ウミ」をすべて出し切らない限り、目的の達成は困難な道となる。