男・山根の本当の狙いとは――。日本ボクシング連盟は15日、助成金の不正流用や暴力団との交際などで会長と理事を辞任した山根明氏(78)が、これまで進退を明言していなかった関西連盟と奈良県連盟の役員、会員について、いずれも辞任すると公式ホームページで発表した。これでアマチュアボクシング界での役職は全て脱ぎ捨てて“丸裸”になった格好だが、事情を知る格闘技関係者が、その裏側にある山根氏の狙いと計算を読み解いた。

 日本連盟によると、山根氏は15日午前10時から大阪市内で吉森照夫専務理事と約1時間面談した。山根氏は会長と理事の辞任を報告した時から、日本連盟への関与を全てやめる意向を持っており、自身は8日の会見でその旨をメディアには伝えていたつもりだったが、この日、改めて具体的に表明したという。

 連盟ホームページでは「この度のことで選手や保護者及び役員の皆さんに大変不安な思いを与えたことについて深くお詫びしたい」という山根氏の謝罪も紹介された。

 日本連盟に関わる全ての役職を辞任して“丸裸”になった山根氏だが、事情を知る格闘技関係者は、その裏側の驚くべき狙いを読み解き、こう語った。

「暴力団との交際や過去の贈収賄などへの捜査、立件を免れるための動きだ」

 確かに“反山根”で立ち上がった「日本ボクシングを再興する会」が突きつけた、公式戦で使用されるグローブを山根氏が独占販売して利益を中抜きにしているという問題などは、刑事告発の可能性が指摘されている。

「グローブの独占販売や自ら認めた賭けマージャンの問題については何も解決していない。今回、全ての役職を辞任したのは、警察の動きを緩くするのが狙い。警察は役職を全て辞めたことで社会的制裁を受けたとして、これらの疑惑への捜査に乗り出した時に、甘くなることを期待しているんだろう」(前出の格闘技関係者)

 狙い通りにコトが収束し、世間が騒動を忘れたころに山根氏の“計算”が頭をもたげるとも。

「騒動のほとぼりが冷めたら山根氏は、きっと会長に復帰するだろう」と、この関係者は言い切る。さらに、少年時代に韓国から密航して日本に来た山根氏が、日本連盟の会長に上り詰めた「謎のカラクリ」も推測してみせた。

「彼を支持する一派には、ボクシングの試合会場や練習施設のジムに押しかけてきた暴力団を彼が“仲裁”して対処したことから、カリスマとして崇拝している者がいる」

 格闘技の世界では、暴力団関係者が会場にやってきて大会関係者を脅すことは、以前はよくあったという。

「そのカラクリは、暴力団と関係のないクリーンな格闘技団体を脅すよう暴力団が子分に指示して、子分との無関係を装った別の暴力団員が、脅された団体へ『お前のケツモチはどこの誰だ? いないならバックについてやる』と言い、競技団体と関係を持つ。このように暴力団が自分でストーリーを描き、相手をおとしめることを“絵図を描く”と言う」

 今回の騒動で、山根氏は若いころから暴力団関係者と深い交際があったことを認めている。

「つまり彼も昔から交友がある暴力団、または子分と共謀し、“絵図を描いてきた”ということ。試合会場やジムを脅すように仕向け、山根氏は暴力団と無関係のフリをして、仲裁をしたように見せたのでは」

 山根氏の経歴は奈良県連盟に関わる以前のことは不明のままだ。韓国から帰化して名前を変えた山根氏。アマチュアボクシング界の“ドン”に君臨するまでになった経緯については、「これでつじつまが合う」と関係者はみている。

 肩書がなくなっても、“男・山根”のストーリーは、まだ幕を下ろしていないようだ。