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フジ 残酷な“さらし者中継”


 柔道のロンドン五輪最終選考会「全日本選抜体重別選手権」(13日、福岡国際センター)最終日は男女7階級を行い、日本代表がすべて出揃った。注目の女子48キロ級は福見友子(26=了徳寺学園職)が世界2連覇の浅見八瑠奈(24=コマツ)を抑え、大逆転で五輪切符を獲得。だが、この裏では思わぬ〝物言い〟が…。選出選手と落選選手の表情が同時に生中継されたことで、柔道関係者から異論が噴出したのだ。柔道では前代未聞の〝さらし者騒動〟を追った。

 緊張感につつまれるホテルの会見場。壇上には全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長(60)と男子の篠原信一監督(39)、女子の園田隆二監督(38)の3人がいた。放送したフジテレビの生中継に合わせるようにして、吉村委員長が代表選手を発表した。
 最も波乱が予想されたのは女子48キロ級だった。世界選手権2連覇で、最有力候補の浅見八瑠奈がまさかの初戦敗退。一方で今大会前までは劣勢だったライバルの福見が優勝したからだ。

 果たして吉村委員長が読み上げたのは「福見」の名前だった。関係者によると強化会議で全日本柔道連盟の上村春樹会長(61)が福見を強く推したのが決定打になったという。もっとも、2人は甲乙つけがたい実力を持ち、実績もほぼ互角。最終予選の結果で決めたことは、ある意味順当な選出といえる。

 それよりも、波紋を呼んだのが「発表の方法」だ。吉村委員長が読み上げるたびに、パーティションで仕切られた隣の控室にカメラはスイッチ。会見の模様をモニター越しに見入る男女の候補選手をアップにしたのだ。ぼうぜん自失の浅見の後ろでうつむく福見…。画面には何ともいいがたい光景が映し出された。

 これに大きな違和感を持った柔道関係者は少なくない。中継を見たバルセロナ五輪95キロ超級銀メダリストの暴走王・小川直也(44=小川道場主)は声を大にする。

「こんなことされるのはきついね〜。あらかじめ選ばれた選手に伝えて、テレビに出せばいい。これでは落ちた選手は〝さらし者〟だし、受かった方も落ちた選手の手前、素直に喜べないだろう。オレらのころは会見自体がなかったのに…こんなの初めて。もうちょっと、選手の気持ちを考えてほしい」

 確かに、名前を呼ばれた選手も呼ばれなかった選手も表情は硬いまま。一部選手は「どう反応していいか分からなかった」と首をかしげ、女子78キロ超級代表の杉本美香(27)も「いるだけで息苦しい空間」と漏らした。選手たちは4年間続いた過酷過ぎる代表争いに生き残った。それを称えることはあっても、〝さらし者〟にする必要などあるのか…それが柔道関係者の率直な見方だ。
 フジテレビ関係者によると、4年前の北京五輪の代表選考の際も選手の控室にはカメラは入っていたため、決して特別な演出ではないという。

「前回は野村(忠宏)が落ちてガックリしている場面を控室で撮っています。もちろん、全柔連の許可はある。ただ、前回は相当数の人数が代表に入る可能性があったが、今回はランキング制が導入されたため、選ばれる選手が限定されてしまった側面はあるでしょう」

 ロンドン五輪出場権があるのは世界ランクで男子22位以内、女子で14位以内。このため実際に代表の資格を持つ候補者は2〜3人に絞られ、よりクローズアップされる形になる。どんなに選ばれないと分かっていても、全柔連の指示で候補者は残る義務があった。そこでこういった〝悲劇〟が起きたようだ。前出関係者も「たしかにかわいそうだけど、ドラフト会議でもそうだし…。もし『やめて』という声があれば撮影させない方向になるでしょうが」と困惑しきりだった。

 こんなむごい状況にも浅見は「代表はたった一人。福見さんには本当に優勝してほしい」と気丈にエールを送った。

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